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THANK YOU!!
【純愛 恋愛小説】

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THANK YOU!!-7


そんな拓斗の態度にイライラしたのか。
千晴がもう見ていられないとでも言いたげに、不機嫌ですというのを目線で訴えた。
目線をぶつけられた拓斗は、更に言いにくそうにしてしまった。
つまり、逆効果。
その二人を見かねた瑞稀は千晴をなだめると、立ち上がった。
そして、拓斗の少し高い位置にある顔をのぞき込んだ。

「千晴はほっといていいよ。・・どうかした?審判の仕事?」

優しく。を心がけて告げた言葉。
その声色に安心したのか、言う覚悟を決めたのか。
瑞稀に目線を送ると、小さく、でもさっきよりも大きな声で、

「・・昼、一緒に食べてもいいか?」

と、言った。
拓斗の様子からして、どんな重大な言葉が告げられるのかと思っていた瑞稀は、
その言葉の理解に数秒かかった。

そして、理解できると笑顔になった。

「勿論!いいよね、千晴?」
「ボクは良いですよ〜」
「ハイ、棒読みでマンガから言葉引用しない。」

明らかにマンガのキャラのセリフを使ったと分かる言葉に瑞稀は冷たく返す。
そして、千晴をずれさせ、自分も広げまくっていた荷物を簡単にまとめ、残っていた日陰の部分に拓斗が座れる所を確保する。
そして、自分の場所に座ると瑞稀は確保したばかりの隣をポンポン叩いた。

「はい、此処でいい?」
「あ、あぁ。サンキュー。」

拓斗は木に寄りかかって座ると、お弁当を広げた。
三人寄りかかっても、ちゃんと直線上に並ぶほどの木の大きさ。
その木に感謝しつつ、瑞稀は拓斗の広げたお弁当のおかずに目をキラキラさせて、おかず交換を求めた。
拓斗はそんな瑞稀に若干引き目を感じながらも快く交換をした。

美味しさのあまり、口いっぱいにおかずをモグモグさせている瑞稀を見た千晴は爆笑した。拓斗も、野生のリスを見てるみたいだと珍しく大笑い。
そんな二人に機嫌を損ねた瑞稀はおかずが未だに口に入ったまま頬を膨らませた。
すると、それも余計に笑わせる要素になってしまい、千晴は更に爆笑してヒーヒー言っている。
拓斗も、お腹を抱えて爆笑。
瑞稀は、不本意だったが、拓斗の屈託の無い笑顔を見れた事が嬉しかった。

お弁当を食べ終わると、食後の休憩。
持参してきたスポーツドリンクを飲みながらもう桜が散ってしまった木を見上げた。

「・・寂しいな」
「・・?瑞稀?」
「・・・?」

ふと漏れた言葉に、両隣に座っていた二人が首を傾げた。
あまりにも、今に似合わない言葉だった。

「桜ってさ、一回しか咲かない。すぐに散っちゃう。そしたら・・寂しいじゃない?」

手を太陽にかざしながら告げた言葉。
瑞稀の、本音。
その重みが理解出来た二人は、言葉の答えに戸惑った。

簡単な言葉は、瑞稀を傷つけることにしかならない。
かと言って、重苦しい言葉をいうのは、躊躇われる。

千晴が口を開ける前に。
瑞稀が小さく苦笑して言葉を取り消そうと、口を開けた時。
瑞稀の耳に、声が届いた。

「寂しくない」

その声は低く、でも優しさを感じられた。
瑞稀は、その言葉で、動きが止まった。そして、その言葉を告げた人へと目線を送る。
こんな優しい低い声を持った人を、瑞稀は一人しか知らない。

「俺は、寂しくない。」

拓斗はもう一度、はっきりと言った。
戸惑いを見せている瑞稀に、伝わるように。

「・・どうして?」

無意識に。
そう聞いてしまった瑞稀。
その言葉と、拓斗に向けられた視線は戸惑いと動揺と・・少しの悲しみが宿っていた。
病気の母親を重ねているのかもしれない。
そう、千晴は思った。
拓斗は、その感情を感じつつ、瑞稀にしっかりと目を合わせる。
そして、言葉を告げる。

「桜が散るってことは、新しい命の為だ。夏から咲かないのは、その準備だ。
嫌でも、季節は巡るんだ。そして、そのたびに出逢いや思い出がある。それを振り返る時間も必要だろ?・・ずっと咲いてたんじゃ、桜に対しての思い出を振り返ることが出来ない。」

一つ一つ。言葉を慎重に、丁寧に選びながらも自分の考えを伝える拓斗。
言葉に、拓斗の優しさも込められている。
その優しさを噛み締めながら、瑞稀は聞き逃さないようにする。

「寂しいって思うなら、その分だけ思い出を作れば良い。何年、何十年経っても、自分を強くしてくれる・・そんな思い出を。」
「・・思い出・・」
「あぁ。・・寂しいって思うことだって、悪いことじゃない。むしろ、必要な事だと思ってる、俺は。」

そこまで言うと、言葉は終わりと告げるかのように、今日何度見たか分からない優しい笑顔で見つめられる。
その笑顔に、顔を赤くしながらも嬉しくなった瑞稀は笑顔を返した。

「ありがとう、鈴乃」
「・・あぁ。・・お前なら、過ぎてく巡る季節に、ついてけるよ」
「・・うん。そうだといいな」

照れくさそうに笑った瑞稀。
すると、空気を読んで黙っていた千晴が言葉を告げた。

「大丈夫だよ、瑞稀。寂しくなったらいつでもボクん家にくれば」
「うん、ありがとう。千晴」

笑顔で安心させるように言った幼馴染みに笑顔を返す瑞稀。
その瑞稀を見て、拓斗も優しく微笑んだ。

すると、昼休み終了のアナウンスが流れた。

「・・昼休み、終わりか・・」
「う〜ん・・もうちょい、休みたかったな〜」
「十分休んだろ・・。」

拓斗の冷たいツッコミから逃れるように勢い良く立ち上がった千晴は、

「んじゃ、お先に!」

と、その言葉を残して自分のクラス席に戻っていった。
残された瑞稀と拓斗は顔を見合わせると、小さく笑った。
そして、同時に立ち上がった。

「さて、行きますか!」

太陽が照りつける中、二人は校庭に向かって並んで歩きだした・・。


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