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未定第二部
推理リレー小説 - その他

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未定第二部 8

数刻後、俺達はセスナを着水させ、救命ボートを海へ放り出した。
ボートは膨らむと意外に大きかったが、波間をぷかぷか浮いていただけでは船へと近付けない。
「さて、どうする?手漕ぎじゃしょうがないだろう。交代で押すか?」
勢いよく飛び出したものの、もう少し計画性を持てば良かったと、俺達は後悔した。
しかし、今泉は例によって爽やかな微笑みを湛えて、人差し指を立てた。
「心配するな、古代。こんな事もあろうかと思ってこれを用意してきた」
古代って誰やねん、とハリセンで突っ込みを入れつつ、今泉が取り出したものを見て俺達は驚いた。
「こ、これは、日本が世界に誇る馬渕の水中モーター…」
赤と白のめでたい配色、ペンの様な葉巻のような細長いスタイル。それはまごう事なき馬渕の水中モーター、であったが、…でかい。
「こんなの、ホントに動くの?」
銀鈴が怪しい視線を向けるが、今泉はまるで意に介さない。再びにっこりと微笑むと、それをボートの底に設置した。
「百聞は一見にしかず」
すると、魔法の一声でもかけたかのように、俺達を載せたゴムボートはするすると波間を滑り始めた。
「何だか、狐に摘まれた気分だわ…」
溜息をもらす銀鈴。
今泉が『こんな事もあろうかと…』用意してきた鉤爪ロープで船をよじ登る。殿は俺、つづいて健、今泉、お銀…。何故か昇り終えたお銀はばつが悪そうにちらちらと今泉を見ていた(大体理由は想像つくが…)。
「大丈夫、『先輩の』も結構立派ですよ。」「えっ?土下座右衛門のクセに!えぇ〜?」黙れ馬鹿共。
デッキに降り立つなり俺たちは歩哨に発見されてしまった。船内に警報を鳴らし、銃を抜き近くにあったコンテナを盾に発砲してきた。イエローボーイの健がライフルを構えた…弾の節約の為ヤクザから奪った猟銃…ホーランド.375マグナム。普段のふざけた表情はない、冷静に引き金を絞り、コンテナごと歩哨を撃ち抜いた。
「意外に早く見つかっちまったな…」
響き渡る警報と、無数の長靴ちょうかの足音にいやがうえにも緊張が走る。
「逃げ場のない船の上で囲まれるとやっかいですね…」
今泉の言葉に俺達は無言で頷いた。そして、それぞれが散らばろうと考えたその時、コンテナの上に小さな人影が現れた。
「新手か?」
健が再び銃を構えた瞬間、その人影はコンテナから飛び降り、戸惑う健に向けて発砲した。
弾は健の肩越しに背後へ抜けていったが、勿論それは相手の挨拶代わりなのだろう。舌打ちをする健を嘲笑うかのように、人影は立ち上がり、健に対して悠然と銃口を向けた。
「なかなか良い腕ね…」
謎の敵はそう言って薄く微笑んだ。
「…女!?」
暗がりから姿を現した敵を見て、俺達は思わず驚きの声を上げた。コンテナの上から飛び降りてきたのはネイビーブルーの軍服に身を包んだ銀髪の美女で、血のように赤いベレー帽の下から、月光に照らされた長い髪の毛がふわりと揺れていた。
「もう、既に私の配下が周囲を固めているわ。蜂の巣になりたくなかったら武器を捨てて床に俯せになりなさい」
俺達の動揺をよそに銀髪美女は冷たく光る銃口を俺達に向けて微動だにしなかった。手にした銃はモーゼルミリタリー。撃鉄の形が特殊で女子供が扱える代物ではない。
「馬っ鹿じゃないの、あんな出来損ないの自動小銃振り回してさ」
銀鈴はこんな状況でも勝ち気であったが、銀髪の女はそれを鼻であしらった。ますます憤慨する銀鈴。

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