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未定第二部
推理リレー小説 - その他

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未定第二部 15

碧にしても茜にしても、今泉が負けるとは思っていないのだろう。いかにも茶番だという風にリングを見下ろしている。
勿論、その評価は正しく、次の瞬間、大男が構えるなまくらの一本は、今泉の一閃で両断された。製錬技術の優れた日本刀と比べ、男のブロードソードなど“最中”も同然である。直刀であるが故にしなりもない。タイミングと角度さえ合えば竹光でも斬ることができるのだ。
とは言え、一度使った竹光はもう使いものにならない。目釘をくわえ抜いて刃を振り落とし、敵の攻撃をかわしながら次の刃を装着する。
間一髪、刃を装着した今泉は振り下ろされた大刀を、再び、ものの見事に斬り落とした。
そして、呆気にとられる男の元へ今泉は悠然と近付き、その喉元へと刃をあてがった。
そして一言。
「あなたの首は、そのソードより硬いですか?」
大男は覚悟を決めたかの様に、どすっ、と胡座をかいた。血に飢えた観客達が身を乗り出し、暴力的な喚声を上げる。
「おい、サムライ、名前ぐらい、教えろ…」
大男がたどたどしい日本語で今泉に尋ねる。
「今泉省吾。」
潔く負けを認めた大男に対し、竹光を納め右手を差し出す今泉。大男も同じく右手を差し出す。
「オレ、は…」
ばきゃっ、大男の名は西瓜の砕ける様な爆発音にかき消された…『首輪』だ。V.I.P席には、満面の笑みでリモコンを握る碧と、嘲りの高笑いを上げる茜の姿があった。
それに対して、今泉は何の感慨も示さなかった。一見すると呆然としているようにも見えたが、やがておもむろに頬に飛び散った血を指ですくい、舌先でその味を確かめると、VIP席に向かって満面の笑みを浮かべる。
「僕は時々思うんですよ、女性は何を知性の代わりにしているのか、…てね」
冷酷な従姉妹に、そう問い掛ける今泉。それに対して、茜は思わず鼻白んだ顔を見せ、茜は気狂いじみた笑いを飲み込んだ。
観衆も今泉の言葉に思わず静まり返ったが、今泉は何臆することなく悠然とその場を立ち去った。
勿論、今泉の首には大男と同じ類の首輪が付けられたままである。


「…頼みましたよ…」
カツーン…ちゃきっ…カツーン…ちゃりっ…ウェスタンブーツと真鍮の拍車が石畳を刻む…。
「『時間を稼いで下さい』の間違いだろうが今泉の旦那?」
すれ違い、ガツッと拳で挨拶をかわし、コロシアムへと足を運ぶイエローボーイの健…。
(BGM…荒野の用心棒)
…待ち受けるは、ウェスタン四天王最後の一人…。
「ケンタぁっ!な〜んばしちょっとかぁ〜?はんかくさいっ!」
…ウェスタン四天王最後の一人…健のかあちゃん…(ガビーン!)。

…うわ〜やっちゃった〜台無しだぁ〜(ガボーン)…その場にいた、全ての人間の正直な感想だった…笑うに笑えず、怒るに怒れず、どーしょーもない困った展開…。コロシアムのド真ん中、竹ボウキでひっぱたかれ『かあちゃん堪忍〜!』と叫ぶ健の姿に、あの今泉姉妹までもが絶句していた…。
「あなたの……?は無駄にしません…!」
唯一冷静な今泉省吾、何事もなかったかの様に『行動』に移る…アンタ鬼や…。

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