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未定
推理リレー小説 - その他

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未定 2

目元に意志の強さを感じることのできる女の少しきつめの口調に俺は気押されながらも必死で答える。
「い、いやぁ‥なんも間違ってへんけどぉ」まだ若さが残るとはいえ立派な社会人であるはずの男の受け答えとしてはなんとも情けないものがある。
女は少々、顔をしかめながら言った。
「それならちゃんと仕事をこなしてもらいたいものね。私も善意でこのお金をあなたに渡すわけではないのよ。」
「はぁ‥すいません‥って、はぁ!?」
女の口調の皮肉さについつい謝ってから言葉の異様さに改めて気付く。
何も女がまったく解することのできない種の言語を発したわけではない。
女はどこからみても妙齢の、多少きつそうという難はあるものの美女の部類に入る立派な日本人だ。
当然日本語で会話をしている。
だが‥
――彼女はなんと言った?
『仕事をこなせ』
それはどういうことだ?
奇妙な言動で男を悩ませている張本人は、男の戸惑いに苛立ちを隠すことなく再び口を開いた。
「ちゃんと荷物を届けろと言っているのよ。あなたはここで待っていて、これが仕事かと聞いたときに肯定したわよね。そんなことでほんとに、大丈夫なのかしら?」
この上もなく辛辣な瞳を向けられ思わず腰が引ける。
確かに裏の仕事ではあるものの荷を運ぶのは俺の仕事だ。
よく言えば『運送屋』悪い言い方をしてしまえば『運び屋』だ。
だが普段はあくまでも普通のサラリーマンである俺のこの裏稼業を知る者は少ない。
面倒が起きるのが嫌なこともあり客は極少数しか取っていない。
依頼客の顔と名前が一致する程だ。
その顧客リストにこの女の顔は、ない。

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