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亜紀13.5才
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亜紀13.5才 10

「そうやって穴底に沈めば、自分の馬鹿さ加減にも気づけるんじゃないか?…何故足掻く?天文学的な数字を突きつけられたのだろう、俺と同じように。ならもう気づいてもいいじゃないか。もはや何をしたって無駄だってことに、な」

そう言いつつ、穴の縁の砂を亜紀に向かってパラパラ落とす。この男、意外と根にもつタイプのようだ。
俯いたまま、降りかかる砂を払おうともしない亜紀。



「ふ……ふふ…」
「なんだ、ついに気でも違ったか?」
「ふ、ふふ………。

アーーハッハぶへぇっ、げほっげほっ!!」 

大口あけて砂を飲み込んだ亜紀。ジャンの胸に罪悪感がよぎった。
「ぐっ……。ふふ、無駄ね…。確かにそうなのかもしれないわ」
言いながら、髪に着いた砂を払う。その仕草は、もはや少女のそれではなかった。
一人の女が、誇り高き人間が、そこにいた。

「でも私はアンタやオヤジみたいに、罰突きつけられてノホホンとしていられるほど人間できちゃいないのよ」
「まだそうやって強がりを……。貴様だって、その罪を忘れてしまいたいのだろうが!」
「お前等と一緒にすんじゃないよ!!!!」

嘘が嘘でなくなったとき、張ったりが張ったりでなくなったとき、それらは覚悟と呼ばれる。


跳躍し、一気に外へ出る亜紀。呆気にとられるジャンを一蹴すると、『るるぷ』を拾った。
「これは貰っていくわ。途中の暇つぶしになるから」
そして再び、まだ見ぬ塔の先端を睨む。

「行くか…!」




「いやーお疲れさまです、亜紀さん。やっぱり早かったですね!」
「おい、一体これはどういうアレだ…?」

赤鬼は亜紀のオヤジと一緒に、白骨(はっこつ)温泉で酒を飲んでいた。
塔を登り始めて30分というところだろうか、亜紀は突然頭をぶつけた。衝撃で滑り落ちそうになる体を必死で支えてよく見ると、どうやらそこは天井のようなものらしい。
「なに?」
頭上に手を伸ばし、赤い空、灰色の雲に亜紀は触れた。
するとどうしたことだろう、天井は人一人が通れるくらいに切り取られた。まるで屋根裏部屋へ入るような趣だ。
入ってみると、そこにはたんまりとくつろぐ二人がいたというわけである。

いつ終わるとも知れぬ旅路を想定していた亜紀にしてみれば、とんだ肩透かしである。

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