誰かを愛すること。誰かとひとつになりたいと思うこと。
──セックス？
まったくクダラナイ。そもそもあんなものを一体化とは言わない。ただ性器が接触して摩擦するだけだ。つまらない。というか、ひとつになったという実感が伴わない。だからセックスに執着する奴の気が知れない。
本当に楽しいか？心の底からふたりがひとつになったと思えるか？幸福なんか感じちゃったりするか？たかだかセックスしただけで？
組み合わせたふたつのパーツは、どこまでいってもふたつのパーツだ。間違ってもひとつになったりしない。
『ふたつ』が単純にくっつき合ったものを『ひとつ』とは言わない。それは人間でも同じだ。
──それが『真理』
不変的で普遍的な、絶対価値。
俺が望むのは、この俺が自分の愛する相手と間違いなく『ひとつ』になることだ。自分自身が納得できる方法で、横道に逸れることなく。
それが俺の望みであり、願いであり、祈りでもある。

ん？俺が誰かって？？
そんな事はどうでもいいし関係なんてないだろ？
俺は俺でしかない。
「ひとつ」になる事が出来れば良いんだよ。セックスじゃない別のやり方でな。最近は「ひとつ」になる方法しか頭をよぎらない。
彼女とセックスしてるときでさえな…。
確かにセックスなんてクダラナイが彼女が求めるなら仕方ない。俺は確かに彼女を愛しているんだから。
そう、「ひとつ」になりたい程に真剣にな…。
「ねー。聞いてる??」
今日は彼女と食事をする約束だ。
だからこうして外を歩いている。
「あぁ。聞いてるよ。」
でも俺の頭の中には相変わらず“一つになる事”しかなかった。
「今日の貴方ったら変。」
「なにが変なんだ??」
「あたしの話ちっとも聞いてないもの。」
「なぁ??お前が俺と一つになれるなら、どんな手段を使う??」
「何??それ。セックスとかって事??」
「なんでもいいさ。答えろよ。」
「そうね…。貴方を殺して、あたしも死ぬわ。」

「え！？」