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太平洋の荒波
その他リレー小説 - 戦争

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太平洋の荒波 166

米軍戦闘機の一部は、何とかV1を空中で爆破しているが対処に手間取っていた。背後から独空軍戦闘機に狙われたり、中には射撃して爆破したはいいが、850kgものアマトールの爆発に巻き込まれて自滅する者もいる。
迎撃をすり抜けたV1が断続的に飛来し、どこかを爆発させた。
両軍の攻撃が激しく、もはや爆弾孔に隠れてもさらに砲弾がその中をえぐり、8の字や品の字を思わせるクレーターがあちこちにあるといった有様で、そこに染みのように血と肉片が張り付いている。
戦車戦が始まって二時間近くが過ぎ、ある1機のV1が突入した輸送船が、火山のような火柱を吹き上げ、四囲を激しく揺らす。
弾薬輸送艦が直撃を受け、あたりの船艇を巻き込んで爆沈した。
この爆発が合図だったかのように猛然と襲い掛かったドイツ軍の前に、壁を破りかけたアメリカ戦車部隊は多数の残骸を残して押し出されていた。




「何とか撃退しましたね」
「ああ…だがまだ奴らは諦めんぞ。明日も来る。我々の犠牲も多い」
「はい。空から邪魔されなかったのは幸いでした」
「彼らにも感謝しないとな」

敵勢をひとまず撃退して安堵する副官に緊張を解かぬままマイスナー大佐は答え、視線を上空の戦闘機隊に向ける。
日も暮れており、両軍の戦闘機隊は交代しつつ接戦を演じていたがその数を減らしている。
まもなく双方の夜間戦闘機がやってくるだろう。
彼らの激闘を物語るように大西洋の壁の内外に、両軍の戦闘機の残骸もちらほらと見受けられた。
今もマイスナーたちの少し向こうでは、ドイツ空軍操縦士が被弾して脱出して保護され、衛生兵の手当てを受けている。
マイスナー達もその様子を見ていた。誰もが硝煙と汗に汚れた顔をしていた。
自分たちの被害集計は、少し前に終わっている。負傷兵の救助や後送を進め、今は整備兵達が損傷車輛の回収や修理に必死になっている。
他の士官が検分していた、敵の新型重戦車の残骸の元へマイスナーたちが向かった。

「バンベルク中佐、失礼するぞ」
「マイスナー大佐、お疲れ様です」

検分していた士官に一声かけ、マイスナーたちも検分に加わる。

「遠くから見ても大きいと思いましたが、これほどとは」
「地中海方面では姿を見せていなかったと聞いている。アメリカが今までどうしてこんな戦車を持ってこなかったのか不思議だったが、いよいよ繰り出してきた……そして厄介な相手だった」
「ですが、装甲厚はティーガーU(ケーニヒスティーガー)より劣ります。これをご覧ください」

副官が驚嘆するように言うと、マイスナーが戦った感想を述べる。
するとバンベルクがM26パーシングの正面装甲を示す。破口から厚みを見てとることが出来た。

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