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香港。大陸の摩天楼と呼ばれていた都市。
煌びやかな夜と陰湿な闇が蠢く魔性の都市をグラムは歩く。
まるで散歩しているように、まるで死神が踊るように。
「つまんねぇな、この都市も」
ボリボリと黒髪を掻くと何日も風呂に入ってない埃が落ちる。日本という島国から船で密入国してから三日目。摩天楼と呼ばれる街ならば多少は面白いことがあるかもしれないと期待していたが、グラムには足りない。
ほんの少し指先を動かす程度で死ぬ奴等ばかり。
期待があった分、失望は大きい。だからだろうか。
足元に横たわる小柄な人影に気付かず、そのまま踏んづけてしまった。
「ぅ・・・、うっ・・・・・・」
人影は踏まれた腹部を押さえて呻く。十にも足らない幼い少女だった。薄汚れた肌には幾つかの傷痕や生傷、煙草の火傷などが覗く。
惨めな少女にグラムの瞳が細まり、踏みつけた足をゆっくりと持ち上げる。だが見逃したのではない。
グラムの僅かに細まった瞳の間には慈悲に似た殺意が濁っていた。
「そこまでだ!」
しかし、グラムがそれを使用する前に彼の周囲に突如現れる無数の車両が取り囲む。
いや、それは車両と呼ぶには相応しくない。
何重もの対衝撃対防御用に張り巡らされた装甲。車両が伸び上がる凶悪な砲台。あらゆる精神攻撃を防ぐ為に常にBMC(対精神感応素材)を内側に貼られたものは既に戦車。対能力者用にアメリカが作り出した兵器だ。
「その子を放せ、能力者」
車両から乗り出すように先程の刑事―ジャッキーが拳銃の銃口をグラムへと向ける。
対能力者用の三十六口径の大型拳銃。中身も当然爆裂手甲弾か、対生物用殺傷弾。戦車の砲台も、そこから降りた刑事達も、遥か彼方から狙う狙撃銃も全てグラムを心臓と頭部を狙っていた。
能力者にとって手足を失う程度ではしなない。
再生能力が高い能力者は頭部を失っても再生するという。
能力者を完璧に殺すには頭部と心臓。その両方を同時に破壊するしかない。
グラムは無数のレーザーサイトが自分の心臓と頭部に突き刺さるのを見て笑った。
つまんなそうに、この程度なのかと嘲笑った。
「―――――温いぞ、お前ら」

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