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lost/bombs
その他リレー小説 - アクション

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lost/bombs 26

更に骸が店員に肉を注文し、雄太と朧は焼けた肉を物凄い勢いで消費していく。その速度に周りの客はおろか、店員すらも驚き目を丸くするが、そんな他人の視線などを気にする性格じゃない二人。
みるみる間になくなっていく食材に骸は溜息をついた。
「お姉さん。肉追加ね」
「あ、はい!」
唯一、ゆっくりとしたペースで肉を食べていた骸が呆然と立っていた店員に声をかけ、店員は急いで肉を持ってくる。骸が肉を焼きながら思わず呟く。
「お前ら、少しは肉を焼いてくれよ」
骸の言葉に雄太は頷き、山盛りに盛られた生肉を掴み、そのまま掌の体温を急上昇。一瞬で摂氏三百度になった熱で一気に加熱。掌から肉汁が零れ落ちる前にそのまま口の中に放り込み咀嚼する。
その行為には誰もが唖然とするしかなかった。そしてボリボリと頬を鳴らして噛んでいる雄太の向こう側で店の扉が開いた。
真昼間から焼肉店に顔を出す客は珍しいなと覗き込むとそこにいたのは黒衣の外套を羽織った少女。
間違いない、雄太が金を施した子供だ。
「お嬢ちゃん、どうした?」
骸が少女を見て怪訝げにしながも尋ねる。少女は無言。ただ黒衣の外套の中身が不自然に蠢く。まるで異形の生物が内密されているように、あるいは内側から膨れ上がる何かを抑えきれないように。
「・・・・・ぁ・・・・・・ぇ・・・・・・・ぉおぉぉおおぉ」
ゴキッと音を立てたのは少女の足元の床だった。木星の床がきしみを上げながら少女の重力に耐え切れず軋みを上げながら徐々に沈んでいく。
「なんだ、なんだ?」
「これは・・・・・・?」
骸と朧が驚きながらもすぐさま戦闘態勢へと変わる。骸はポケットから煙草を取り出し口に加え、朧は拳を握り、狼の顎のような構えを取る。
ただ雄太だけが無言で、立ち上がらず少女を見ていた。
少女の唇の間から奇妙な緑色の触手が這い出て雄太へと襲い掛かる。鋭い切っ先を叩き落としながらも雄太は立ち上がらない。触手の勢いで少女が被っていた黒衣の外套が外れ、隠れていた顔が現れる。
黒い外套の中に隠されていたのは十歳の幼子の可愛らしい容姿・・・・・ただし半身だけは。
残り半分は樹木のような木肌に覆われ、その間から無数の緑色の触手に似た枝を伸ばして蠢いていた。痴呆症のような顔の口元から触手と共に唾液が零れ落ちる。
「チッ、≪異貌憑き≫だったのか」
骸は舌打ちしながら顔を歪めた。朧は奥歯を噛み締め、ただ雄太だけが無表情のまま少女を見続ける。
「どけ、殺人鬼。異貌憑きはすぐさま殺さなくちゃいけない。それがこの洛妖の・・・・いや、この≪街≫で俺たちが生き残る為のルールなんだ」

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