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Private Excution
その他リレー小説 - アクション

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Private Excution 25

「全く!どこに行ったんだあの大間抜けは!」
空のベッドに怒鳴りつつ、設楽曜子が周囲を見回す。その声に、丸い回転椅子の上に腰掛け、左足首に包帯を巻いていた男子生徒がびくりと震える。
「ん?あぁ、お前はただの捻挫だから早く病院に行け」
これが保健医の言葉だろうか。しっしっ、と手を振る彼女に何を感じたのか、男子生徒は涙を浮かべて保健室を出て行った。左足を引きずりながら。
「昨日の今日だというのに‥‥いくら回復用ナノマシンを入れたといっても」
辟易したように息を吐き、曜子は自身の椅子に腰掛ける。
夕べ、彼女は朔馬が六峰と交戦しているときに姿を見せなかったが、実はちゃっかりと脱出していた。
伊川悠紀を下した後、朔馬達を追い掛けた彼女だったが、あの遊馬と巨大ロボット、《ラングアーミッヒ》が戦っていた大ホールに着く直前に、あの爆発に巻き込まれたのだ。そのため曜子はもと来た道を逆走し、集まる警察や野次馬の目を盗んで脱出したのだ。
「ちっ、まぁいいか」
大怪我をした人間が抜け出したことをその言葉で片付け、曜子は煙草に火をつけた。
ラッキーストライクはゆらゆらと副流煙を立ち上らせ、ゆっくりと、灰を落としていった。
雲に隠れた太陽の脆弱な光が、コンクリート作りの屋上を頼りなく照らしていた。
「やっぱりここだったのね」
フェンスを掴み、ぼんやりと外を眺める男子生徒に声をかけたのは、三角巾で左腕を吊り、右の頬に大きなばんそうこうをはりつけた女子生徒。それでも彼女は美しかったけれど。
「曜子先生、怒ってるんじゃないの?」
「お前こそ、優等生が授業サボっていいのかよ?」
隣でフェンスに体を預ける蒼依に、朔馬が吐き捨てるように言う。
「あら、優等生だって怪我して病院に行くことぐらいあるわ」
「そうかよ」
ため息を一つつき、朔馬は再びフェンスの向こう側に視線を戻す。
「今回の一件で、S・Hの流通元の4割を抑えることができたらしいわ。それにしばらく枢公院からの指令もなさそうだし」
蒼依が空いた右手で前髪をかき上げる。
「‥‥昨夜は、大変だったわね」
「あぁ、大規模な地盤沈下に巻き込まれちまったからな」

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