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Private Excution
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Private Excution 2

一人目を倒し、少年が体の向きを変えると、そこに映るのは警棒を大上段に構える黒スーツ。それにもまったく慌てることもなく、半歩下がってそれをかわすと、目標物を失い、たたらを踏む黒服の後ろに回り込み、後頭部を両手で強打する。白目を剥き、警棒を取り落とす二人目を蹴り飛ばし、少年は腰に提げていた刀を鞘ごと引き抜く。それで振向きもせずに側面からの警棒を受け止める。男が腕力に如何程の自信があったのかはわからないが、渾身の一撃が片手で防がれたのはショックだったようで、驚愕が右手から伝わってくる。
少年の体が、沈む。
 逆方向から放たれた銃弾は、少年の髪を掠め、黒服の左肩に鮮血を巻き散らしながら突き刺さる。
 それでも容赦なく鞘を下から上へと突き上げ、三人目の下顎を破壊すると、二人目が落とした警棒を拾い上げ、すかさず投擲する。
 きりきりと舞いながら突き進む鋼の棒は、ピストルを構えた男の頭部を叩く。ぐらり、とよろめく四人目が床を舐める前に、少年は低い姿勢からとん、と地面を蹴る。そのまま体を捻り、両サイドから挟み打ちにしようとしていた二人の鼻を靴裏で同時に踏み潰す。
みっともなく鼻血を垂らしながら倒れ込む二人を背に、少年の姿が霞む。
 それが、少年の高速移動だと、気付いただろうか?
 一瞬の後、カチン、という、刀を鞘に納める音が小気味良く響く。
 そして、残りの黒スーツは、闇に沈む。血は、流れていない。それぞれゆっくりと平伏す。

──カツン、カツン…

 少年の靴裏が、床を叩く。
 二人の男には、それが処刑への13階段を上る音に聞こえたに違いない。
月明りが、少年を闇から照らし出す。
 短めの黒髪は無造作に立てられており、秋口にも関わらず、黒のロングコートを着ていた。その全身漆黒の装いが、尚一層二人の男に恐怖を植え付ける。
 聞いたことがある。この荒廃した時代に、政府の極秘独立機関の下で暗躍する、超常的な身体能力を持った少年の噂。闇を切り裂く、月夜の剣士。
 少年は、年齢不相応な、不敵な笑みをたたえていた。
 夜は、まだ長い。
『昨夜未明、緋烏町の埠頭で、覚醒剤の取引をしていた男、計10名が逮捕されました。警察では、余罪の追求と、覚醒剤の流通ルートの解明を急いでいます。
 次に、相次ぐ失踪事件の続報で──』
──プツン。
 そこまで聞いて、少年はテレビの中の女子アナの言葉を遮り、ベッドから腰を上げた。
 …先に、彼の紹介をしておこう。彼の名は、御子神  朔馬(ミコガミ サクマ)緋烏市内の高校に通う、17歳の高校二年生。

 夏休みが明けたばかりだからだろうか、通学路を歩く生徒たちは、皆どこか気だるげで、眠そうな顔をしていた。

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