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新八剣伝
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新八剣伝 7

イヤな予感がしてたまらない。だが昨日の夜の事件に比べればこの程度、と思えなくもない。
俺は最後の一歩を踏み出した。


予感は的中した。が、それは予想していたものとは大きく離れていた。
始業ベルまではまだ時間がある。まばらな人数で、呆然と教室の端にナニかを囲んでいた。
「…お、おい、これって先生に早く言った方がいいんじゃあ…」
「あ…じゃあ俺言ってくーーー」
突然一人の女生徒が卒倒した。近くの机や椅子を巻き込んで、派手な音を立てる。
「キャーーーーーーーッ!!!!」

それが合図だった。円は姿をなくし、我先にとばかりに教室の外へ向かっていった。異常に気づいた他クラスの生徒が何事かと入れ替わりに入ってくる。

そして再び悲鳴。


混沌とした教室の中で、遠目にも俺は見た。ついさっき会ったいじめっ子三人が、ヒトとしての形を失っているのを。
顔は執拗に殴られ、異常に膨れ上がっている。他の誰もつけないような悪趣味なピアスにシルバーのネックレスがなければ、とっさの特定は難しかっただろう。

だが、彼らのもう一つのアイデンティティであっただろう着崩した制服は、無惨にもその肉体ごと切り刻まれていた。
顔面同様に無節操に弄くられ、蹂躙された胴体からは吐き出されるように、肉体の『すべて』が覗いていた。


声を出すこともかなわず、俺はそのまま教室の出入り口にへたり込んだ。今朝食べたトーストを吐き出したくなるのを必死でこらえる。


「なんで…なんでこんなことに…」
慣れないことをしたからだろうか。いつものように、周りとあわせて、波風たたせず生きていれば、こんなことにはならなかったんじゃないか。

『それは違うぞ、真一』
「何が、だよ…」
『結局お前は、いや、お前たちは遅かれ早かれこのような事態に遭遇したのだ』
「そんな…なんで…」
『それは以前説明したとおりだ。それ以上でもそれ以下でもない』
「どうすればいい…」
『それは真一、もう気づいているのだろう。お前はつい先日、勇気を出し、正義を示した。同じことをすればいい』
「…力を貸してくれるか?」
『当然だ。君たちに被害が及んだ。護衛任務を持つ我々に責任がある』
「場所はわかるのか?」
『ちょっと待て。
…たった今、下手人をおぼしき奴から信号が送られてきた。だが真一、これは誘いだぞ』
「構うものか」
吐き気はいつの間にか消えていた。足にも力が入る。
「こんなこと見せられて、怒らない奴はいねぇよ」
『よし。なら場所を教えよう』
俺は立ち上がった。
『奴は今、旧校舎にいる』




旧校舎は校庭を挟んで新校舎と反対側にある。曇り空から雨が強く降り出していた。
中にはいるとバラバラと、叩きつけるような雨音が校内に響いていた。具体的な位置は掴めているものの、押しつぶしそうな強いプレッシャーが襲う。

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