白々黒々世界 7
さらりと言った双六に対し、今まで営業スマイルを浮かべている従業員の顔が豹変した。血の気が引くように無表情になったのだ。
そのまま従業員は後ろに跳躍して双六から距離をとると、次に食器等が入れられた荷台を双六や香燐がいるソファーへと蹴りつけた。
食器等が詰め込まれているため、荷台本体の重さも合わせてその重量は100kgを上回る。それが加速してぶつかってくれば、威力はかなりのものだ。
また、ソファーに座っているという無防備な状態で躱せるはずはない。
実際に二人はその場を動くことはなかった。
一方は今の状況についていけず、目の前に迫ってくる荷台に身を竦めた。
そしてもう一方は避けるのではなく、座ったまま片足を突き出して荷台を難なく止め‥‥‥‥
‥‥‥‥銃弾の嵐が彼を襲った。
今度は香燐も動けた。
直ぐ様、彼女はソファーの後ろに身を隠すして、銃声が止むのを待った。
「何処だぁぁぁぁあ―――」
絶叫に近い男の怒鳴り声が部屋を響かせる
銃弾は部屋に置かれた高級感漂う家具をただの木屑に変えていく。今ソファーに隠れている自分もいつ肉片に変わるかわかったものではない。
そして、こんな状況を作り出した人物はというと‥‥
‥‥‥いつの間にか隣で一緒に隠れていた。
「ふぅ、危なかった。」
今も十分生命の危機に瀕しているのだが、双六は安堵の息を吐いた。すると、先程まで続いていた銃声が止んだ。
恐る恐る物陰から覗くと、銃を乱射していた男が血だらけになって膝をついて仰向けに倒れていた。そして彼の体にはナイフやフォークが何十本も刺さっていた。
「なっ!?」
「もう力尽きたのか。根性ないねぇ、こいつ。」
物陰からでた双六は倒れた男のもとへと歩いてそう言った。
男はまだ意識があるようで、双六の接近に気付くと必死で体を動かそうともがいた。
「無理すんなって、傷口拡げて出血死するぞ。後で救急車も呼んでやるからおとなしくしとけよ。」
「がはっ!?」
双六の声に答える代わりに男は吐血して、自分と相手の顔を汚した。
そんな異常な光景をなにも言えずに香燐は見ているしかなかった。
そんな彼女をほっといて双六は血だらけの男に問いただす。
「お前を雇ったのは誰だ?」
「‥‥‥‥」
「じゃあ、何で僕がここにいるのがわかった?」
「‥‥‥‥」