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白々黒々世界
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白々黒々世界 4


笑う青年と困惑する少女。
彼の笑い声は二人だけしかいない薄暗い空き地で反響し、エコーとなって彼女の精神を追い立てる。
青年の笑顔が偽りのモノなら少女は彼の真意を疑い、彼を敵と判断できるだろう。しかし、彼の笑顔は本物であり、彼の馬鹿馬鹿しい発言もまた、本意であることが少女にはわかる。

確信ではなく、直感‥‥‥

オレを助けたようだが、得体の知れない奴に身を任せられるほど自分はお人好しではない。今は何より、相手の情報が欲しい。


「‥‥‥オレはあんたの真意を聞きたいんだ。オレに用があるんだろ?」

「あぁ、その為にこのメキシコに来た、と言ってもいいぐらいだ。雑用はまだあるが、正直今はどうでもいい。
‥‥‥‥一緒に来ないか?」

「はぁ‥‥‥?」

「家族にならないかって聞いてるんだよ。年齢的には次女になるかな?」


少女は青年の言葉に固まった。
彼は座っている瓦礫の山から飛び降り、自分の方へと歩いてくる。だが、今の彼女に青年を警戒する余裕が無かった。


『自分に用がある‥‥‥』

助けられた時から可能性として視野には入れてはいた。だが、その内容は『家族にならないか』という誘い。普通なら冗談だと一蹴するところだが、少女にはそれができなかった。

自分の夢を笑うことなどできない。所詮叶わぬ夢だとしても、持ち続ける。


だからこそ、こんな唐突に‥‥‥‥こんな簡単に叶うはずがないんだ!!


だからこそ‥‥‥。


「嘘‥‥だろ‥?」

彼女は自分が望んだ夢を拒絶した。

「おいっ」

「!!」

青年に肩を掴まれて、少女はやっと我に返った。肩に乗せた手を振りほどこうとしたが、できなかった‥‥‥

「おい、大丈夫か?急に黙って‥‥‥
言っとくけど、嘘じゃないからな。家族にならないかって話。冗談で言えることじゃねぇよ。」

今にも倒れそうな少女を支えながら、青年は心配そうに言う。少女は栄養失調もあってか痩せ細り、顔は貧血で青白い‥‥‥
少女に近寄って始めて彼女の容体が悪いことに気付いたのか、先程まで浮かべていた笑顔はない。


「‥‥‥心配してくれるのか?」

「当たり前だろ?お前はもう僕の家族だ。木霊は本人の意思がどうとか言ってたが、悠長にして野垂れ死にそうだからな。
どっかゆっくり休めるところないか?お前の家とか。」

「‥‥‥‥家は‥な‥い」

「なら今僕が泊まっているホテルに来ればいい。医者も後で呼ぶ。」

フッと身体が持ち上げられる感じがしたと思うと、自分がは青年におんぶされていた。すると、弱りきった自分の身体に青年の体温が伝わってくる。


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