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白々黒々世界
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白々黒々世界 3






それから数時間後‥‥‥
少女は市街地にある高層ビルの一室で軟禁させられていた。
今自分が座っているソファーも含めて、周りには高級感漂う家具が置かれている。後ろには壁一面の窓があり、地平線から顔を出した朝日が室内を明るくする。

「落ち着かないなぁ‥‥‥‥」

ソファーにもたれかかったまま少女は呟いた。普段の彼女であれば周りにある金目のモノを奪って逃げ出すが、あの時あった青年が気になって動けずにいたのだ。






「最近の大人は短気で嫌だね〜。子供相手に銃向けて。
‥‥あ、だからって人の物を盗んでいいって理由にはならないよ。」

そいつは突然現れてオレに説教をし始めた。
日系人のその男は年は二十代から三十代の間といったところか若い。半袖にジーンズといった格好で頭にはメキシコ特有の麦わら帽子を被っている。そして薄暗い夜中にもかかわらず、そいつはサングラスをかけていた。


「お前‥‥何者だ?」

「観光客だよ。この路地裏で迷子になっちゃて。よかったら大通りまでの帰り道教えて。」

「‥‥‥‥。」

少女は青年の冗談のような嘘に笑いだしたくなった。
観光客?冗談じゃない。
少女が住んでいる地区はこの町で最も治安が悪く、貧困に喘ぐ場所だ。出ていく者も多いが、入ってくる犯罪者もまた数が多い。町に住む者ですら寄り付かない場所だ。観光客が間違っても来る場所ではない。


だが、今目の前にいる青年はそんな馬鹿共とは明らかに違うことが彼女にはわかる。


『死』


青年から彼女が感じるのはその単語でしかなかった。
正確に言うならばサングラスで隠された彼の目からだが、そこから強烈な死のイメージを感じる。

もし彼がその目を隠していなければ、少女は会話はおろか、意識さえ保てたかどうか疑わしい。


少なくとも額に銃口を突き付けられた方が生きた心地がした。


「で、道案内はしてくれるのお嬢さん?」

「お前がやったのか?」

「へ?」

「お前がこいつらを気絶させたのかって聞いてんだよ!!」

目の前の恐怖を振り払うかのように怒鳴った少女に青年は普通に驚いた。

「うわっ、そんなに怒鳴らなくてもいいじゃないか。殺したわけじゃないんだし。
『薄汚いマフィアに襲われる少女を助ける』

こういうベタな感じが大好きだからさ、つい手がでちゃたわけだ。」

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