白々黒々世界 2
銃口のひんやりとした鉄の感触が伝わってくるのを少女は感じていた。
「おいおい、弾薬だって安くないんだ。ナイフで首切ればいいだろ?」
「あと一発ぐらいいいだろ。」
笑いながらそう返した男は引き金に指を掛けた。
――ここでオレの人生も終わりか‥‥‥
銃口を額に押し付けられた少女には先程まであった死への恐怖がなくなっていた。
――あんな小さな穴から出てくる鉄屑程度で人は死ぬんだ‥‥‥‥生命の価値っていうけど銃弾一発分で消し飛ぶほどの価値しかないのかな?
生まれ変わったらここよりましなところがいいな〜
『もう来世に夢抱いてるのか?諦め早いな〜〜』
頭のなかで笑い声に交じってそんな声が聞こえた。自分は二重人格になれるほど器用な奴だとは思っていない。どうせ死ぬ直前の自問自答にすぎない。
『人生諦めが肝心って言うけど、生きることそのものを諦めたら本末転倒じゃね?』
――この先生きてたって夢も希望もないんだ。死んでるように生きたくわないんでね。
『お前まだ15才だろ。ガキが夢見なくてどうすんだよ。なんかあるだろ、お姫様になりたいとか、看護婦さんになりたいとか。僕はどちらかというと後者をえらんでほしい。』
――看護婦さんってお前‥‥これ本当に自問自答!?まあいいや、ガキっぽい夢なら一応もってるぜ。ちょっと恥ずかしいけど。
『お、なになに?』
――オレの夢はな、『――――』だよ。
『お前からその夢がでるか。世も末だね〜〜。‥‥‥‥叶えてやろうか?』
――無理だね。オレ今から死ぬし。
拳銃の引き金が引かれ、乾いた発砲音が空き地でこだました。
少し間が合って、目の前で誰かが倒れたような物音が聞こえた。恐る恐るつぶった目をゆっくり開けてみると、そこには先程まで自分をいたぶっていた男達が全員倒れていた。
「‥‥‥う、嘘。」
一体何が起こったのかわからない。自分の身体に異常がないか確認してみるが、どこも撃たれた様子はない。まして、男が自分に向かって拳銃の引き金を引くまでそんなに時間はかからなかったはずだ。
倒れている男達に近づいてみた。脈があり、息もしている。どうやらただ単に気絶させられているだけのようだ。
じゃあ、一体‥‥‥‥
「一体誰がこいつらを倒したんだ?」
「『僕だよ』」
頭のなかと背後から聞こえた声に驚き、急いで少女は後ろを振り返った。
少女がそこで目にしたのは、空き地に不法投棄されたゴミに腰掛けている青年の姿だった‥‥‥‥