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白々黒々世界
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白々黒々世界 12


「そんなに気を遣ってくれなくても……。」

「遠慮しなくてもいいわよ。その内嫌でも愚痴をこぼしたくなるからね〜」

笑いながらも横目で酉と双六をじーっと見てくる木霊に二人は居心地悪そうに愛想笑いした。

「ついてきて、あなたの部屋に案内してあげる。」

そう言って案内されたのは、ベッドや机といった最低限の家具しかない部屋だった。壁紙は薄汚れ少し汚れていたが、香燐にとって自分の部屋がもらえるだけで十分だった。
「ありがとうございます、木霊さん。」
「家族に敬語なんて使うものじゃないわよ。とくにあの馬鹿共には特にね。」
淀んだ空気を外に逃がすため窓を開けると、風が木霊の黒髪を揺らす。夜勤明けで化粧もしていないが、艶やかな黒髪に整った顔立ちをしてりた。色気がない自分とは違う彼女の姿にしばらく見とれていた香燐であったが、木霊の声に我に返った。
「父さんが家族に迎え入れる子は普通の人じゃないのは知ってる?」
「それってどういう意味ですか・・・」
「言葉通りの意味よ、あなたは“普通”ではない。父さんや酉や私と同じように・・・・・。」
「意味が分かんないですけど。」
「・・・・たしかに分からない方が幸せなのかもしれないわね。ごめんね、お姉さんの戯言だと思って聞き流して。」
そう言って木霊は部屋を出て行った。


「何だったんだろう、あれ。」
木霊は戯言だと言っていたが、彼女は香燐をずっと心配するような目で見ていた。
彼女が自分に何を伝えたかったのかはわからないが、そのうちわかることだろう。そう呑気に考えた香燐は、長旅で疲れた身体をベッドに沈めた。




「さて、説明してもらいましょうか。」

壁に掛かった時計が二時を差す深夜。
リビングに皆を集めた木霊は双六を見てそう言った。
「彼女を後継者の最有力候補としてここに連れてきた。それだけだよ。」

「自覚さえしていないあの娘をですか!?自分が無茶するのはいいですけど、他人を勝手に巻き込まないでください。」


「今すぐ『魔王』の地位につけと言っているわけではないんだよ?そんなに怒らなくても………」

「まったく………父さんがどれだけ楽して今の地位に就いてるのかわかってるの?先代の後継者問題では当事者だけでなく、無関係の人々までも巻き込んでしまった。過去の惨劇を繰り返さないためにも、候補者は彼女のような何も知らない子供に背負わせるべきじゃないんです。」

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