白々黒々世界 11
「住む場所ならもう確保してるよ。裏山にある廃墟になった屋敷を買い取ったから大丈夫。業者に頼んである程度改築も済ませてあるからな。」
はははっ、とこの場の重苦しい空気を晴らそうとする酉。
「酉。君は瓦礫のローンも払い終わってない私に無断で、しかも随分高い買い物をしてしまったものようだね。」
先程の暗い雰囲気から一転。元気(?)を取り戻した双六は酉に詰め寄った。
「いや〜、木霊の“そういえば近くに格安物件があったわよね”の一言で決まちゃて‥‥‥。」
「また浪費癖が始まったか‥‥。暴走した時は猟次と二人で止めろと言ったはずだぞ。」
さらに悩みの種が増えたのか双六は頭を抱える。
「とりあえず、新居にお引っ越しと行きますか。」
「切り替え早いな、あんた。」
双六の怒りの矛先がそれて安心している酉に香燐はただ呆れるしかなかった。
「で、この娘が新しい養子ってわけ?」
「どうも。」
旅館の受付を改装した広いリビングに皆が集まっていた。すでにそこには若い女性がソファーに寝転んでいた。徹夜明けで疲弊したのだろうか、彼女の目元には濃い隈ができている。
「お父さん、今度はどんな厄介ごとに首突っ込んだの?後始末する私たちのことも考えてよね。」
「え、厄介ごとって…………」
「大丈夫、今回の仕事は依頼主の品を奪い返すのが目的だったからね。彼女は直接的には関係ないよ。」
「つまり無関係の香燐ちゃんを巻き込んじゃたわけだ。………最低ですね。」
冷めた目で義父を睨み付ける彼女に誤解を解くため、香燐は割って入った。
「違うんです。双六は殺されけた私を助けてくれたんです。それで……独り身の私を家族に迎えてくれるって……」
「まあ本人がいいって言ってるんだったらいいけど。私は高崎木霊(たかさきこだま)困ったことがあったら、相談に乗ってあげるから遠慮なく話してね。」