トリップ・ドリップ・ストリップ!? 10
「ええ、ケイの考える通りです。眼に浮かぶ紋章――眼紋は人それぞれ違いがあります。この世界では戸籍と共に眼紋が登録されるのです。
そして眼紋には幾つかの系統があって、使える魔法の傾向や強さを知ることができる」
「私は自分の眼紋を知らない。どんな魔法をどれだけ扱えるのか予想できないせいで、習得しているのは最低限の魔法だけだな」
この世界では魔法が一種のステータス。さらに強さが比例しているのは間違いない。僕には理解できないけれども。
「あ、あの戦場で後方にいたデッカいロボットって何ですか?」
あまり辛気臭い話題も雰囲気上宜しくない。魔法については追い追い知っていけば良いのだろう。
「ロボットとは何だ?」
「えっと――機械人形?」
「ああ。『――ガンド』の事ですか」
あれ、一部分だけ元の発音に戻ってる。日本語じゃ表記できない単語らしい。
「ケイの世界では『――ガンド』に当たる単語が存在しないみたいですね」
「ケイにも分かる言葉で言うと――人型重装甲機械騎士、で良いのか?」
『――ガンド』はグランタリア語の祖先にあたる古代ベルア語という言語の言葉であり、現代のグランタリア語にもない発音をする。本来の意味は「神の僕」。現在は愛称の形で呼ばれているらしい。
現グランタリア語に翻訳すると『バズゥ』と発音するが、普通に機械騎士でも通じるそうだ。
「そんな技術があるんですね。僕の世界では、二足歩行する兵器なんて実用的じゃないって話でしたけど」
「あれは我々の技術では作れない。古代遺跡から発掘して使っているんだ」
それなんてホワイト〇ール?
「じゃあ、どうやって整備や維持をするんですか?」
戦闘で損傷した部分は、一晩で自動的に修復されるという。 修復には傷に応じて鉄や金銀などの無機物、さらに植物や動物の死骸といった微量の有機物が必要だ。それぞれの機械騎士に充てられた収納庫内に置いておく事で勝手に使用される。まるで食事するかのように。
「修復中のバズゥには近づくなよ。捕まって喰われるぞ。しかも大きなものは一度小さく切り刻んでから食うらしいからな、そうなっては目も当てられん」
「噂では何本もの触手を用いるそうです。確かめようが無いんですがね」
うへぇ。何その金属生命体。
「あながちその表現は間違ってないぞ。操縦士が意図しない行動を取ることもあるらしいからな」
その口振りだとパイロットはいるみたいだ。中身はどうなっているんだろう。
「機械騎士は往々にして人の魔力を糧に作動します。操作方法は色々ですね」
自分の動きが反映するもの、所謂モーショントレース型。頭で考えた動作をする思考型。ロボアニメにありがちな操縦桿型。声で指示して動く指令型。