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トリップ・ドリップ・ストリップ!?
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トリップ・ドリップ・ストリップ!? 9

「確かに。我々にとって紙というのはとても高価なものです。知識を伝える崇高な道具として、聖グランタリア教会により製造技術は秘匿されてますし。
 ですがケイの国――いや世界では、紙は安価に且つ大量に生産されていると」

 宗教絡みでは仕方がないか。ついでに神聖視されてるのかも。

「はい。それ――ティッシュって言うんですけど、人の肌が荒れないように柔らかく作られてて、さらに水分を良く吸収するんです。お尻を拭く方は水に溶けやすくできてますし。
 勿論、丈夫にすれば本にもなります」

「私からすれば、これは大変素晴らしい事だと思います。ここまで紙が普及しているとすると、ケイが話してくれた義務化された教育についても辻褄が合います。
 なんたって本が沢山あれば、それだけ知識が沢山の人に渡るのですから」

「うむ……。それがこの兵法書と同じ紙なのなら、それだけ多種多様な加工技術が存在するという訳か。さらに紙の用途も様々と」

 あれ、意外にすんなり。紙に対する認識ひとつ違うだけでここまで差が出るのか。
 キルトは勿論、クレアさんも聡明な人みたいだ。

「で、ケイが異世界の住人であるという何よりの証拠は、ケイの眼です」
「眼?」
「そうか。ケイの世界に魔法の類が存在しないのなら、眼に紋章が浮かばないのは当然だ」

 この世界には魔法がある。この世界に住む者であれば、常時ではないが必ず瞳に紋章が浮かぶ。魔法が使える者は、力を使わずとも意識するだけで瞳に紋章が現れる。また魔法を唱える時も同様に。
 使えない者は特定の魔法を扱える人間に診てもらうと瞳に紋章が浮かぶという。

「でも、クレアさんは僕の眼をただ見てただけですよ?」

 キルトは魔法を使った。それはキルトの眼に浮かんでいた紋章を見れば分かる。呪文も唱えていたし。
 それでも僕の眼には何も浮かばなかったから、キルトはしきりに首を傾げていたんだけど。

「私の眼は少し特殊なんだ」

 稀に、何をしても一切の紋章が浮かばない者が生まれるらしい。その者は魔法を使わずとも、相手の眼を見るだけで紋章が分かるという。

「一瞬だけケイは私と同類かと思ったが、今ならキルトの眼を見た時の反応で違うと断言できる。眼に紋章が浮かぶ現象すら目にした事がない様だったからな」

 僕もびっくりした。同時にクレアさんの洞察にもビックリ。
 でもほんのりと肩を落としている様に思えるのはなんでだろう。

「こんな『眼』だからな。昔は気味悪がられたものだ」

 もし、眼の紋章が身分証の役割を担っているのなら、クレアさんが望むと望まざるとに関わらずに筒抜けになる。誰だってプライバシーを覗かれたら嫌がるだろう。

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