トリップ・ドリップ・ストリップ!? 8
やっぱり信じちゃくれないよねー。クレアさんの心証悪くしちゃったかな。
「……なら、ニホンとはどういう国だ?」
「えと、どういう……うーん」
「ではこちらから質問します。『正直に』答えて下さい」
手の力が増した。肩に置く、とは表現しにくい。むしろ肩を掴む、の方がしっくりする。
そこからは質問攻め。人口、国土、政治、歴史など日本のみならず、どういう世界だったのかを事細かく訊かれた。
もちろん学校で習った範囲しか知らないので、答えられない質問もあったけど。
「ふむ。よく出来た設定だな。自分で考えたのか?」
「違いますっ。本当なんですって!」
「……設定、というには懲りすぎじゃないですか?」
「こんな話を信じろと?」
「出任せで、政治理念まででっち上げるのは無理があるとは思えませんか。ここまで公平で平等を追求しつつも、筋が通っている。しかも現実的に」
「どっちの現実的だ。我々でも実現可能って事か、それともさっき聞いた役人の汚職か?」
権力の乱用、収賄、それに加えて民意から離れる政治。民主主義の弊害。
「両方です」
満面の笑みと共に、キルトの手が離れていった。次に手にしたのはスウェット、の上にちょこんと置かれた丸めたティッシュ。
「実は、これを見た時からそんな事じゃないかって思ってたんですよ。でも確信には至らなかったので、ケイの口から直接聞こうかと」
「え、でもそれは只のゴミですよ?」
使用済みティッシュ(嫌らしい意味じゃないよ)が、どうして僕が異世界人という結論に繋がるのか。
「ケイ、これは何に使ったのですか?」
「鼻をかんだだけです。寝る時に鼻水が垂れてきたんで」
「それがどうした。私だって鼻はかむぞ」
「我々の場合は、繰り返し使う布切れですがね。ケイのこれは?」
「使い捨てです……けど?」
「ではもう一つ。これは日常的に使いますか?」
「はい。スーパー……えと、商店に日用品売り場があるなら大抵売ってます。あと、用を足した時に使うのもあります」
「もしかしてこれよりも大量に使ったり?」
首肯する。キルトは驚くよりも、ただただ感心し続けている。
さっきから質問の意図が見えない。これで何が分かるというのだろう。
「では最後に。これは――紙ですね?」
なんだか名探偵が謎を解くシーンに似ている。外堀を埋めていくような、遠回しな質問だ。
「そうですが……?」
「なんだと!?」
――あ、そうか。
「紙なんて滅多に手に入らないものだ! 私のこの兵法書だって、この地図だって、一般人が手に届く代物じゃないんだぞ!?
それを鼻かみに? 尻拭きに? ふざけるのも大概にしろ!」
クレアさん恐っ。ともかく、紙は製法がまだ確立されてないが故にまだ高価な物なのか。思えば羊皮紙っぽい奴になんか書いてたもんなぁ。