トリップ・ドリップ・ストリップ!? 7
クレアさんは僕と同じ方法を取った。出鱈目な図を指し、訴えるような目をする。そしてお互いに言葉を教え合っていた所で、キルトが帰ってきた。
「クレアルド――。―――――」
クレアルド。それが彼女の本名なんだ。やっぱり早口だと聞き取り難い。『サァ』だの『クァ』だの曖昧な発音だからか。
文字も英語のようなロシア語のような、それでいて中東系の言語も混じってる感じだった。
クレアさんと会話するキルトの手にはペンダント。青い石が嵌っている。宝石なのかも。
クレアさんとの会話を済ませたキルトは、僕にそのペンダントを手渡してきた。
「クレポグァ?」
キルトの両眉が上がる。驚いているのか。戻ってくるなり、僕の口から知ってる言語(グランタリア語?)が出てきたからだと思うんだけど。
クレアさんが口を挟んできた。さっきのやり取りを話しているんだろう。感心したような感じで僕をチラ見。――なんか、むかつく。今まで見下してたの?
受け取ったペンダントを仕舞うようなポケットの類いは、今着てる服にはなかった。付けろってことか。
「これでいいのかな?」
「はい、結構です」
「そうで……へ?」
あれ、いま独り言に反応があったよね?
辺りを見回すがキルトとクレアさん以外は居なかった。ちょっぴり、僕の他にも異世界に来た人がいるのかと期待したんだけど。
「お、通じたな。年代物だからちゃんと機能するか怪しかったんだが」
あ、クレアさんが何言ってんのか分かる、判る、解る。
「それは魔法が込められたペンダントですよ。私の言葉、理解できますよね?」
「は、はい! バッチリです!」
すげー。魔法まであるのか。さすが異世界だ。
「で、言葉が通じるようになった事だし、ケイがどこから来たのかを尋ねたいのだが」
これは正直に言った方がいいのだろうか。多分、クレアさんもキルトも立場のある人だ。異世界から来たなんて言えば、上に報告するだろう。
その後は……想像に難くない。この上なく面倒な事になること請け合いだ。
「ケイ、で良いんですよね。ケイは――そう。私達の知らない国から来た。地図にも載らないような」
「馬鹿な。陸も海も人が住む場所は全て調査された。ニホンなんて国、どこにもないぞ」
「どこにもない国から来たんですよ。ね、ケイ?」
「そう、なるんでしょうね」
キルトは何もかもお見通しだと言わんばかりの笑みで僕に話を振る。正直に言えと、肩に置かれた手が圧力を掛ける。クレアさんには見えないように。
優しそうなのは外見だけ。結構狡猾な手を使ってくるよ、この人。
「異世界から来た、と言ったら笑いますか?」
「――はぁ!?」