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トリップ・ドリップ・ストリップ!?
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トリップ・ドリップ・ストリップ!? 5

 手で催促してきた。僕は軽く頭を下げてから一口かじる。もさもさしてるけど、小麦独特の香りが鼻の中に広がった。朝食しか摂ってないし、こっちに来ていきなり吐いたから、正直なところひもじかった。
 もう一口かじって水筒の水を少し含む。ものすごく質素なのに、想像以上に美味い。空腹が一番のスパイスって本当だったんだ。

 食べる勢いが増したのを見て安心したのか彼女はまた僕のスウェットを観察しだした。

 貰ったパンも食べ終わり、残りの水で口を潤していると先とは別の男がやってきた。

 白を基調とした法衣。所々赤い刺繍が施されていて、全体を見ると植物のツタが走ってるような印象を受ける。彼女、クレアの甲冑の装飾と似ていた。
 静かで優しい雰囲気を纏った、まんま聖職者ですと言わんばかり。ついでに金髪イケメン。ついでだよ、羨ましくなんてないよ!

「――キルト。――」

 キルトと呼ばれた男の人。やはり部下らしい。胸に手を当てて軽く会釈。僕には優しい笑顔で会釈。返した会釈は苦笑いだけどね。

 クレアさんに何かしらの指示を受けている。キルトはたまに相槌を打ちながら内容を聞いてるけど、終始首を傾げていた。
 ふと、僕の着ていたスウェットを手にしてキルトの目の前で伸ばす。伸ばしに伸ばす。あー、あんなに伸ばしたらゴムが緩くなっちゃう。

 ポトリと何かが落ちた。キルトはそれを拾う。捨て忘れていた丸めたティッシュだった。胸ポケットから落ちたんだろう。

「――!」
「―――?」

 キルトの表情が変わった。衝撃とか驚愕って言葉がぴたりと当てはまりそうな顔だ。

「―――?」
「――。――イヌムラケイ―――」

 キルトが何かを尋ねた。クレアさんは僕を指差してそれに答える。
 僕に歩み寄ったキルト。近くで見るとまたイケメン。クレアさんとお似合いじゃん。王道なカップルだねっ。

「――。キルト・ルデ・グルビス―――」

 胸に手を当て、名前を分かりやすく発音してくれた。どうやら敬礼の他にもお辞儀としてのひとつの形みたいだ。

「あっ、どうも。狗村圭といいます」

 真似をして名乗ってみる。この動作を覚える必要はあるだろう。今後のためにも。

「―――」

 不意に、キルトは僕の顎を持った。クレアさんと同じように。僕は一瞬身がすくんだけど、害意はないようなのでお任せすることにした。

「〜〜〜〜〜〜〜〜」

 自らの瞳を閉ざし、祝詞のような呪文のような文句を放つ。
 かっと見開かれた瞳には、光の紋様が浮かんでいた。虹彩の辺りをぐるりと囲まれるように文字が浮かび、中央には光で幾何学的な図形が浮かんでいた。
 アルファベットのMの字と、その谷になっている部分に小さくVの字が収まっている。そんな形。

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