トリップ・ドリップ・ストリップ!? 4
彼女が見ているのは僕ではなく、僕の眼球。瞳そのもの。
「―――?」
彼女は首を傾げた。僕の目に異常があったのだろうか。
「えーと。クレア……さん?」
ハッとした表情で手を横に振った。なんでもない、と言いたいのだろうか。
なんとなく、なんとなーく気まずい雰囲気になっていると、垂れ幕が開いた。
「―――。――――」
「――。――」
彼女の部下らしき人がやって来た。手には衣服。その上にパン、それに水筒みたいなやつ。
ひとしきり会話を終え、彼女に持ってきた物を渡すと部下の人は敬礼(おでこではなく胸に手を当てていた)をしテントを出た。その時、その人が僕を睨んだような気がした。怪しむとかじゃなく、敵意を込めたような。そんな感じ。
「―。イヌムラケイ、―――」
パンと水筒は机に、僕には服が渡された。彼女は僕のスウェットを指差す。汚れていた。襟を引っ張って嗅いでみる。汗臭い。
着替えろ、という事らしい。
え、ここで着替えるの?
「いや、貴方の前じゃさすがに――わっ」
彼女の前で脱ぐのをためらっていると、白い腕が伸びた。
問答無用とばかりに上着を脱がされる。は、恥ずかしい。
「――、イヌムラケイ」
手渡された服は動物の毛でできた緑色の服。ゲームやら映画に出てくる村人Aとかがよく着ていそうな襟が折れた簡素なものだった。
僕は渋々ながらも着てみる。着心地は悪くない。多少の伸縮性もあり、腕を回しても体を捻っても問題はなかった。ちょいキツいけど。
一方彼女は脱いだスウェットをもの珍しそうに手に取っていた。しげしげと見たかと思うと、いきなり引っ張っる。彼女の眉が少し動いた。
特に袖口、襟元がお気に入りらしい。それぞれに強めのゴムが通してある。保温性抜群だ。
彼女が夢中になっている隙に、ササッと下を着替えた。見られるのはマズい。男として。
なんかピッチリしたズボンだ。胴回りに紐が通してあって、それで調整するみたいだ。色は濃い赤、ワイン色とでも言えばいいのか。こちらは上の服とは違って伸縮性抜群。なんかピエロが着てそうなそんな感じ。
ご丁寧に靴まで用意されていた。とんがった靴ではない。靴底も何枚も布地が重なっているだけの、謂わば西洋風の足袋。
うーん。慣れない感触。
「クレアさん。着替えました」
ニコニコしながら振り向く。一通り確認するとさらに笑顔で頷いた。似合ってるとか問題ないとかそんな意味だろう。
今度は僕に椅子を勧めてきた。もう抵抗するつもりもないので大人しく従う。
目の前にはパンと皮製の水筒。食べて良いってことで間違いないのか。一応、パンを掴んで彼女に確認を取る。