トリップ・ドリップ・ストリップ!? 13
「僕らの世界で、兵器搭載型の人工衛星なんてお話の中だけだったんですが、この地上の文明でも機械騎士を造れたんですよ? それを超える文明が存在し地上を攻めようとするなら、あの息星を造っていても不思議じゃない」
つまり息星は敵の前線基地という事だ。
「なら、機械騎士は本来空の上――宇宙からの脅威に対抗するためのものだと?」
「おそらくは。ですが、確かめ様がありません」
「今の我々の力では到底な。……古代文明の遺産に古の戦争の名残り。こんな話、誰も信じないだろう」
この考えが浮かんで、輪郭が出来上がったとき。頭の中でひとつの懸念が浮かび上がった。
「当時の敵勢力はまだ……?」
見上げた空は満天の星。見下ろす星は杞憂か元凶か。今の僕には知りようがなかった。
◇
「おいケイ。さっさと乗れ」
「おいて行っちゃいますよー」
グランタリア公国の首都ベーベルへ帰還する馬車に、僕も同行させてもらう事になった。
先に戦勝の報告をするとかで、部隊の撤収や陣の撤去は少ししか手伝えなかった。あの時の兵隊の人たちの視線が痛い痛い。
どうもクレアにはファンが大勢いるらしく、てめぇはクレア隊長のなんなんだぁ!?――と胸ぐらを掴まれた時は死ぬかと思った。
クレアのテントでこの服を届けてくれた人の、あの睨みつけるような目もこういう事に違いない。
あまり快適とは言い難い乗り心地の馬車に揺られ、小一時間。まだまだかかるそうだ。
あの陣を張っていたのは国境付近。グランタリア公国の国土は広いという。
現在、山脈を隔てた隣の国、リーシスト武国からの領地侵犯が多発している。戦争状態ではないものの、両国間で緊張感が高まっているという。
昨日の戦いも侵犯してきた賊に対応したもので決してリーシスト武国との戦争ではない、というのが両国の言い分である。
明らかにグランタリア公国を狙っているのは見え見えだが、公にはそう発表しているらしい。
「参ったな。そんな面倒な時に来ちゃうなんて」
「グランタリアが豊かな国である証拠ですよ。お隣も羨ましいのでしょう」
「武国というだけあって、武力主義の国家だ。わが国の領土や資源よりも、狙いは機械騎士だろうな」
グランタリアは、その広大な土地に相当数の遺跡が存在する。ゆえに機械騎士の数も膨大で、総数およそ1万体。どこぞの白い連邦軍みたいだ。……機械騎士は黒が基調だけどね。
グランタリアの遺跡に眠る機械騎士は全て回収され、整備してから各部隊にまわされる。クレアの部隊、すなわち遊軍多目的部隊『ゲゲドァの剣』には、13体の機械騎士が配備されている。