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飛人跳屍
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飛人跳屍 6

 一方、李散尽の手中の剣は自由自在、相手が全身全霊の技を万全の状態で仕掛けぬかぎりすべてを軽くさばく剣であるから、相性がわるい。
 道士は次には右手の長剣でたちむかったが、浮足だった状態で「李花散尽」に敵すべくもない。せいぜい、防戦しながら木から木へ跳びうつるのが関の山だ。
 それを追って、「李花散尽」の剣光も、木から木をわたってゆく。

 ところで、僵屍の相手を受けてたったやつはといえば、
「三体め、四体め!」
 李散尽があれだけ閉口のていで逃げ回った相手というのに、舌を巻く素早さだ。
「五体め、……と、これで完了、おめでとう!」
 僵屍どもはことごとく、剥がれた札をふたたび額に貼付けられて静止し、ひらりひらりとその間を掠めていた疾風のごとき白影も静止した。
 白く見えていたのは、その人物が白い道袍を纏っていたからだ。ただし、静止してみれば、上に袖なしの黒い八卦衣をもはおっているし、髪もまた黒ぐろと、背の半ばまで垂らしているが。
 もとどおり、行儀よくなった僵屍どもを満足げに眺めると、彼はふんと笑って、
「この白浩雲、僵屍の相手となるに関しては、いささか覚えがある。よいか、以後、私の前ではめったに騒がぬことだ」
 妙に芝居じみた口調で重々しく、聞いてもいない相手にいいわたすと、
「おい、李弟」
 李散尽に呼び掛ける。
「まだか」
「だって師叔!」
 李散尽が、情けない声で、
「こいつ、七星剣の一振り持ってやがって、それで法術使ってきやがるんだ、きいてねえよ」
 たしかに、李散尽の周囲に激しく飛び回るものがある。
 白浩雲が頷いた。
「ほう、たしかに七星剣の一振り、天旋剣のようだ。李弟、よく見抜いたな」
 李散尽の周囲に飛び回っているのは、剣だ。剣把を握る人はない。法術によって剣を飛ばし、その動きを操っているのだ。
 剣を飛ばした道士はといえば、この隙に逃げようとするところ。ここまで連れてきていた僵屍も、構っている暇はないらしい。
 はっとそっちへ目をやった白浩雲は、
「李弟、しばし持ちこたえろ」
 李散尽に叫ぶと、
「逃がすか――掌雷!」
 右の指先を切った血でなにやら書いた左掌を道士に向けた。
 道士はいましも一本の木に跳び移ったところであったが、白浩雲の構えを見るなり、慌てふためいて跳びおりた。慌てるあまり、むしろ「落ちる」といったほうが正確な様子で。
 道士が逃れた直後、木に一閃、白光がはためいた。稲妻のようでもあるが、雷が落ちるときほど音は激しくない。
 ただ、たしかに木の枝が裂け、火に爆ぜるパチパチという音はするが……それも木のごく一部。
 それ以外の木の上半分は、この一撃で焼けぼっくいとなっていた!

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