TRADEAD 2
「いい夢見れたか?」
…この声は。
「せっかく奢ってやったのに寝過ぎだろ」
言わずと知れた諒平、だ。
「ごちそうさま」
「寝呆けてんじゃねーよ。もう放課後だぞ?」
もう放課したのか。
今日も勉学に勤しんだな。
誰が何と言おうと勤しんだ。
「じゃあまた明日な!」
明日もゴボウ奪われるのか?勘弁して欲しい。
「出来る事なら諒平の顔は見たくないけどな。」
「ゴボウの為なら嫌われたっていいさ」
自分で持ってこいよ馬鹿野郎。
「わかった。じゃーな」
アホには構ってられない。
寝ぼけてなんとなく机でぼーっとしていた。クラスメートたちは次々に帰っていく。
そしてはっと我にかえると、いつの間にか教室に残っているのは俺一人。
「あ、やべっ…。帰らなくちゃ…」
カバンを持って立ち上がる。
ふとその時、足元になにかが落ちているのに気付いた。
なんだこれ?
拾いあげてみると、それは可愛らしい便箋に入った手紙だった。
『高見真哉様へ』とある。
…ラブレター?
もし不幸の手紙だったら嫌だな。
そんな事を考えながら、一応周りに人がいない事を再度確認して、丁寧に便箋を開いた。
『はじめまして、かな?
君に話したいことがあるので、これを読んだら、昼休みに屋上に来て。
出来れば、一人で。』
こっ、これは…告白って奴ですか?
いや待て、名前が書いてないぞ。
しかも薄緑色の手紙だ。ラブレターならピンク系の色を使うんじゃないだろうか?
よくは知らないが。
内容もはっきりと好きとか書いてあるわけでもないし。
不安だ。
限りなく不安だ。
まさか…ヤキを入れられるのだろうか?
何にせよ早く行かなければ!
えっと時間は…っと。
昼休みか。明らかに過ぎてる…。
それに屋上は立入禁止と聞いた覚えがある。
確か柵が錆びてて生徒が誤って落ちて以降、許可無しでは入れない筈だ。
とりあえず明日にして、今日は帰ろう。
帰り道で手紙をもう一度読んで思ったが、字が若干丸文字だが綺麗な所を見ると、恐らく差出人は女子だろう。
帰宅後、夕飯を食べ、ベッドで明日会うであろう女子の事を妄想していた。
付き合うべきか?
断るならどんな台詞が良いかな?
そんなことを考えていると、自然と眠りについていた。
…今日も変な夢を見た。
内容が気になるが、何も思い出せない。
実害はないものの、記憶喪失になった気がして悔しい。
おっと今日は女子との対面だ。
朝食を手早く済ませ、鏡の前で身嗜みチェックをし、軽くスキップしながら学校へ向かった。
…えぇ、一人ですとも!
気持ちの浮き沈みを短時間で経験しながら、教室に着くと、予想通り諒平が話しかけて来た。
「よぉ!昨日真哉を訪ねて来た先輩がいたけど、何かしたのか?」
だから何度心の中で言ったらわかる。快便だ。
…ん?
先輩と話した覚えはないぞ。