龍戦記〜龍の力を受けし者〜 10
クリフはシェリーに歩み寄っていく。彼の靴が地面につく度にその周りが白く凍った。
「シェリー、自分ばかりイイ所見せるなよ。次は俺の番だ」
「何だ、戦いたかったのか?仕方ねぇな、不服だけど代わってやるよ…」
シェリーはそう言ってうっすらと開けた目を閉じると、背中から倒れていった。クリフがすかさずその背中を受け止める。
「シェリーお疲れ様…さてと、狼との対決か」
クリフがデススピアの方を見ると、それは既に消えていて、閉じ込められていたウルフグルーはこちらに向かって歩きだしていた。
「アイスソードで力を試すとするか…」
クリフはレオンにシェリーを預けると、一人ウルフグルーへ走り出した。白い結晶のような物が彼の右手にどんどん集まっていく。ウルフグルーとの間合いが狭くなった時、それは氷の剣へと姿を変えていた。
「すぐ終わらせてやる…」
クリフは氷の剣を降り下ろすが、ウルフグルーは素早くそれを回避する。クリフの剣が何度も地面を斬りつける。
「クッ、速い!!」
クリフの剣が勢い余り地面に突き刺さった時だ、ウルフグルーはそれを見逃さなかった。
その黒い狼は疾風の如くクリフに襲いかかる。彼は剣が抜けないのを確認すると、それを抜くのを諦め、両手を飛び掛かって来る黒い狼に向けた。
黒い狼がクリフに噛みつく寸前、彼の前に氷の盾が現われた。黒い狼は勢いよくその盾にぶつかると、クリフによってそのまま地面に叩きつけられた。
「これでお前は終わりだな」
黒い狼が地面に寝そべっていると、地面の上でそれは凍り始めた。
「この世にはびこる呪われし死者よ、成仏しろよ」
ウルフグルーの体は凍り、全く動けなくなっていた。クリフは地面に刺さった剣を全力で引き抜くと、冷凍された黒い狼にそれを振り下ろした。
砕け散った氷の間から黒い煙りが出てくると、それは空へと昇っていった。
「クリフさん強いじゃん」
「あの程度の狼、一遍に50匹出てきても問題ないな」
「お、そいつは心強い。じゃあ50匹斬りいってみますか!!」
「50匹斬り?」
クリフが首を傾げるとレオンが顎で何かを差した。その先を見てみると、そこにはウルフグルーの群れがあった。
「まさか本当に…」
「一人じゃ難しかったかも、クリフさんがいてくれて助かるよ」