龍戦記〜龍の力を受けし者〜 5
「仕事はオレンジジュース以上だな」
「いや、オレンジジュースの方が上だ」
「たく、お前っちゅう奴は…」
オルクスは扉を開くと同時に、敵を何体か斬り捨てた。斬られたグルーの叫び声が、他のグルーを興奮させる。そんな中、すかさずラスティンはグルーの群れに斬りかかる。
「おい、オルクス!!どこが二か三だ!!」
「間違えた、二百か三百だ、マスター鍵を閉めとけ」
オルクスはマスターの顔を見ると扉を閉めた。外の風景は地獄だった、グルーと呼ばれる腐りかけの化物達が、地面を隠してしまうぐらい大量にいた。
グルーは“普通”黒く照り光を放ち、グチャグチャと音をたてながら人間を襲う。ラスティンの前だとどっちが襲われてるのかよく分からないが…
「おいオルクス!!さっさと手伝え!!」
「ああ、悪い」
オルクスは二本の剣を構えるとグルーの群れに飛び込んだ。彼の両腕は、まるで異なった意思を持つ生き物のように動き、敵を斬り刻む。オルクスの攻防は休む事なく続き、次々とグルーは屍に変わっていった。
「あとどれぐらいだ?オルクス!!」
「百もいないはずだ、喋ってないで仕事に励め」
「仕事はきっちりやってるちゅうの!!おりゃあああ!!」
オルクスの激励の言葉が通じたのか、ラスティンの放つ剣が勢いを増していった。
「あんまり力み過ぎるな、勢いの代わりに隙ができてる」
「へいへい、こんなくそおおお!!」
ラスティンが四体のグルーをまとめて斬り上げると、グルーの黒い血の雨が地面を濡らした。
トントン、トントン──
突然カフェの扉が軽くノックされた。マスターが扉に近付くと外から“新聞読みかけだ、とっとと開けやがれ”と声がする。
マスターが鍵を開けると、扉が開いた。先に入って来たのはオルクス、彼はマスターの肩を掴むと“オレンジジュースおかわり”と追加注文してカウンター席に座った。
「あー、ラスティン、オルクス?先にシャワー浴びてきてくれ、黒い血で店の中が汚れちまう」