龍戦記〜龍の力を受けし者〜 4
──これはデストロイヤーであまり語られなかった、北の国との闘い“龍戦記”のもう一つの話──
「東と西、一体いつまで戦争続ける気なのかねぇ」
カウンター席で30代ぐらいの男が新聞片手に溜め息をつく。男はもう片方の手でコーヒーカップを握ると、それを口に運んだ。
「まぁ俺達には関係ない話だろ、オレンジジュースを頼む」
コーヒーを飲む男の隣りに20代ぐらいの男が座った。彼の黒い服装には意味の無さそうなベルトが幾つもついている。出されたオレンジジュースを少し飲むと、彼は無表情で“うまい”と呟いた。
「なんだ“オルクス”またオレンジジュースかよ」
「いいか“ラスティン”オレンジジュースこそが、大地の恵みなんだ」
「今日もオレンジの素晴らしさを語るつもりか?」
「今日はもういい、それよりモンスターの事聞いたか?」
ラスティンはコーヒーを一気に飲み干すと、眉間に皺をよせた。
「黒いゾンビの事だろ?この町の近くに新種が生息し始めたと思ってたが、どうもそうじゃねえみたいだな」
ラスティンは新聞を丸めるとそれでオルクスの頭を軽く叩いた。オルクスはその新聞を掴むとひろげた。
「恐怖“グルー”増殖ね…これがゾンビの名前か?」
「まあそんな所だろうな」
トントン、トントン…、ドンドン!!─
突然カフェの扉が何者かに強く叩かれ始めた。店のマスターは困った顔をするが、オルクスはオレンジジュースを飲み、ラスティンは再び新聞を広げた。
「あー、ラスティン、オルクス?」
「何だ、今面白い記事読んでんだ」
「ん?俺はほら、オレンジジュース飲んでるから」
「…二人とも、そう言わずに、ね?今日も奢りでいいからさ、ね?」
マスターの低い態度に、二人は気をよくしたのか立ち上がる。店の壁にかけてある剣を、ラスティンは一本、オルクスは二本持って扉の前に立つ。
「オルクス、どれぐらいだと思う?」
「二か三ぐらい」