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龍戦記〜龍の力を受けし者〜
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龍戦記〜龍の力を受けし者〜 40

「東国の兵士に殺された貴方の息子さんを、被験体に使わせていただきました。グルーにしてしまうのには勿体ない能力を持っていたのでね」
「…許さん」
「待ってください。息子さんはもう使いません、何故なら─」
バシャッ、紫の液体がドレイクの顔にかかった。それを拭い息子だった者を見てみると、彼は肉と骨だけになってもがき苦しんでいた。

「失敗作なんです、彼は。ドクロの面無しでは五分ともたない体でしてね…、だから代わりに貴方を─」

「ドレイク!!」

「ん?」
女の叫ぶ声がしてラルがそれに振り向くと、彼の顔面に盾が直撃した。馬上で盾を構えているのは、マリアだった。マリアはドレイクの腕を掴み引っ張り上げると、砂埃の舞う戦場を走り去っていった。


「大丈夫か?」
馬を走らせながらマリアは後ろを振り向いた。ドレイクは何も答えない。二人が沈黙したまま東国軍の陣に戻っている時だ、マリアは後から両手で腰をつかまれ、地面へ投げられた。ドレイクがマリアの馬をのっとったのだ。

「すまぬなマリア将軍。奴は…、ラル・バーストだけはこの手で血祭りにあげねば気がすまんのだ!!」
「ドレイク将軍!!戦に私情を持ち出すな、それにそんな体で勝てるとでも思ってるのか?」
「皆の者よく聞け!!今からマリア将軍に全軍の指揮を委ねる!!……部下達を頼んだぞ」
「ドレイク将軍!!」
ドレイクは脇腹に刺さった剣を引き抜くと、その剣を握り馬を戦場へと走らせた。

次の日の朝
なんとか黒き騎士団を追い返したマリア達だったが、被害は甚大なものだった。精鋭とよばれた西国軍がほぼ全滅。西国軍大将だったドレイクは、今朝、人間なのかも分からないぐらいに斬り刻まれ、敵の使者により運ばれてきた。
「ドレイク将軍…、この事は絶対兵達に漏らすな!!これは我々を動揺させるための敵の策だ」
マリアは一人陣営を抜け出すと丘の上から戦場となる荒野を見下ろした。肌を刺すような寒さが感じられ、吐く息は白くなっていた。

「プレント様…」
マリアはプレントから貰った手帳をおもむろに取り出す。彼女は表紙にある刺繍の字を指でなぞると、それを抱き締め、空を見上げた。

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