龍戦記〜龍の力を受けし者〜 26
部隊長の問いに二人の部下は何も答えなかった。部下二人はアーミーナイフと新型銃の手入れに夢中で、隊長の質問が聞こえていないようにも見える。
「毎回毎回…聞こえてるなら返事をしろ!!」
「聞こえてるからそんな大きい声ださないでください」
「隊長は相変わらず短気だねえ」
二人の部下は隊長を茶化すような言動とる。隊長が黙り込むとプロペラの音が目立って聞こえた。
「あ〜ストレスたまるなぁ、早くこの任務終わらせて帰りてぇな」
ぼやく隊長。胸元からペンダントを取り出すと、そのトップを開ける。中には子供を抱く女性の写真が入っていた。
「アンナ…もうやんなっちゃうよ」
隊長がペンダントから窓の外に視線を移すと、遠くの方に二つ未確認の戦闘ヘリが飛んでいた。
「おいお前ら!敵の…」
「隊長早くしてください」
「隊長はワイヤーなしで降りるんすよね?」
隊長は部下二人に降下準備の命令するつもりで振り返ったが、二人はそれより先に降下準備を終えていた。ゴーサインでいつでも飛び下りられそうだ。
「……」
隊長は無言で降下準備をすると、笑顔で二人に地上へ降りる合図をした。三人の工作員達がワイヤーを使い、密林へ降りていく。
彼等は地上に降りると、ベルトに付いた器具からワイヤーを切り離す。三人は暗視ゴーグルをかけて密林の中を駆けていった。
それから数秒後、夜空で爆発が起きた。乗ってきた戦闘ヘリを隊長が自爆させていたのだ。自動操縦だったのもあり、丸焦げの死体は落ちてこなかった。
「見ろ、“ラズィ”!俺達のヘリが爆撃をくらったぞ!!」
「何言ってんだ“スコット”ちげぇよ、花火だよ花火」
「いや、私が自爆させたんだ」
『え!?』
隊長の発言に耳を疑う二人。彼等はどうやら帰りの心配をしているようだった。隊長は“作戦会議で何回も話したのに…”と溜め息をつく。