龍戦記〜龍の力を受けし者〜 16
その日の昼頃─
難しい顔をしたラスティンと花束を持ったオルクスが、町の中を歩いていた。沢山の人が歩いていたが、二人の顔を見ると皆、道をあけてくれた。
男達は恐れと尊敬の眼差しで、女達はうっとりした目で二人を見ていた。
「なあオルクス、本当にその花で良かったのか?」
「これがいいんだ」
「ん〜、まあオルクスがそう言うんなら仕方ねえけどよぉ、それ…タンポポだよな?」
「駄目なのか?」
「いや、そうじゃねぇんだが…何か違う気がしたんだ。まぁ忘れてくれ」
「何だ、間違えたかと思った…」
ラスティンが束ねられたタンポポを見ながら歩いていると、あっという間に町長の館の前に辿り着いた。
町長の館は家族と使用人が住める部屋があるぐらいで、目立った装飾もなく、とても簡素な建物である。
「ラスティンさん!!」
「あん?わりぃんだが、誰だっけ?」
ラスティンの顔を見ると、館の門番が急に駆け寄ってきた。門番の反応とは対照的にラスティンは困った顔をしている。
「僕ですよ、ピピンです。貴方の代わりに補充された傭兵です」
「ああ!あの時の若造かぁ、元気にしてたか?」
「この通りピンピンしてますよ。今日は町長に御用ですか?」
「おう、ちょっくら町長と話がしたくてな」
「そうでしたか、それでは案内しますね?こちらへどうぞ」
ピピンが門を離れると、他の見張りが当たり前の様に門番をし始めた。ラスティンはその姿に感心しながら館に入っていく。
「ラスティンさんと一緒という事は、そちらがオルクスさんですか?」
「おうおう、よく知ってるじゃねえか」
「この町では有名ですよ?皆最強の魔剣士二人組って呼んでるぐらいですし」
「カーミラはいないのか?」