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暗殺少女
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暗殺少女 23

「幽……」
「ん?」
「説明……」
「ああはいはい」
「君が死神について教えてくれるの?」
「面倒だな……えっと?」

幽はしばし思案に暮れ、やがて儚に促され口を開いた。

「あたしらの社会?……の事とか細かい事については後回しだ。まず死神になろうと思ったら、今の人生は諦めなくちゃ駄目だな。その代わり寿命は長いよ。どれ位だったっけ?」
「死神によってかなり違う……短いと二百年にも届かない……」
「長いと?」
「二千年位……」
「そんなに違うのか。で、他にも色々メリットみたいなのはあるんだけど……説明するの面倒臭いから追い追い。んで仕事は霊に魂くれって言うだけ。簡単。ただしすぐに死神になれる訳じゃなくて、今の姿のまま死神の力の一部を手に入れた状態で、数年待たなくちゃいけない。あたしは死神予備生とか呼んだりしてるけど、言わば蛹みたいなもんかな。今日の所は以上!……どうした?顔色悪いぞ?」

見れば悟は緊張した面持ちで俯いている。彼は俯いたままこう言った。

「これ、夢じゃなかったのか……」
「ぷっ、ははははは!遅えよ!」
「……頭を整理する時間が欲しい。今日の所は帰ってくれないか」
「ははは……ん?いいぞ?暫くはここに居ても無駄っぽいし、他にもする事はあるし。行くぞ儚」

幽はあっさり引き揚げた。
言うだけ言って早々に帰り、期を見て再び姿を現す。実は当初の予定に沿ったまでの事だ。

「じゃ、またな」

二人の少女が闇に消える。
静寂。
悟は一人、思案に暮れた。
が、程なくして妨害を受ける。

「儚ちゃん?何故戻って来たのかな?」
「演技、上手ですね……」

一瞬、悟から表情が消え、それは悪戯小僧の笑みに変わった。

「最初夢だと思ったのは本当だよ」
「……」
「僕には既に死神にしてくれと頼む以外の選択肢は無い。今は気持ちの整理の時間なんだ」

悟は独り言の様に呟きながら、押し入れを開けた。
儚が息を飲む。

能面だ。押し入れの壁に二、三掛けてある。その下には箱が積まれている。この中身も面であろう。

「これは……?」
「僕も面に魅せられた者の一人でね。この中の殆どは安物のレプリカだけど、幾つかは自分で打ってみた物だ。どれか一つあげるよ」
「何故……?」
「お近付きのしるしに、ね」
実際は悟自身にも、自らの行動の意味は分かっていなかった。
まさに『ただ、何となく』の行動であったのだ。

儚は箱の一つを手に取り、開けた。
気品の漂う老人の面。

「……これは?」
「小尉(コジョウ)。尉面の中で一番品格が高い面だよ」

次。
金眼の男の面。

「……これは?」
「鷹(タカ)。怪士(あやかし)の一種で、妖気がある」

少し楽しくなってきたのか、儚は次々に箱を開けては、悟に説明を求めた。
そして。

「これは?」

黒塗りの翁面。白く長い眉と顎髭がついている。

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