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大光旅伝〜『龍』の章
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大光旅伝〜『龍』の章 9

 
「舞国だけじゃなく、もっと広い目で世界を救わなくちゃいけねーってのに、小競り合いなんかしてる場合じゃねーだろが……」

大軌はまた目を半分だけ開き、半ば呆れたように言う。
龍鏡の集まる荘厳な場で、明らかに浮いた態度。場は凍り付き、緊迫した雰囲気が漂う。

「ちょ、ちょっと大軌様……龍光鏡様の前で何を……」

大軌を宥めようと龍天鏡が慌てて言うが、龍光鏡は表情を変える事なく大軌の言葉を待つ。
月杯も特に変わった様子はなく、まるで示し合わせたような光景に龍天鏡は一人首を傾げた。
 
「凍雲に行く方法はある…… しかも、丁度お誂え向きな顔ぶれだしな……」

大軌はちらりと龍天鏡と月杯を見て、含み笑いを浮かべながら言った。
その笑みは妙に妖艶で、それでいてはっきりと何か企みがあるのは間違いなく、さすがに皆不審がる。

「……町娘。お前は自分でケリつけなきゃなんねぇ…… それはお前が一番分かってんだろ……」

大軌はもたれていた柱から身体を起こし、言いながら龍天鏡の元へ歩み寄る。

「流石であるな、大軌殿」

押し黙っていた龍光鏡が、ぼそりと呟く。まるで、始めから分かっていたかのように。
 
「丙、母君がさぞお嘆きだろうな」

月杯も毒づきながらも笑い、龍光鏡に一度頭を下げた後、大軌の元へ歩み寄る。
大軌も龍光鏡へ一礼し、羽織を翻し月杯と共に間を後にした。

「ちょっとー! 一体全体何だっていうのよー!」

龍天鏡は訳も分からず叫び、龍光鏡の穏やかな笑みにその背を見守られながら後を追った。



  城を出た三人は、割末と凍雲の国境である関所付近に居た。
流石に「牢関」と呼ばれるだけあり、その警備は厳重そのもの。まさに子猫一匹通さぬといった雰囲気である。
 
「ねー、大軌様。どうやって関所をくぐるの? まさか正面突破する訳じゃ……」

羽織の袂に手を入れながら悠然と佇む大軌に、半ば不安げに龍天鏡は尋ねる。

「乙、俺はそれでも一向に構わん」

月杯は担いだ戟を掲げ、自信に満ちた目で大軌を見遣る。
不安が募った龍天鏡が大軌の羽織を掴むと、大軌は小さく息をつき、くるりと踵を返して関から離れて行く。
読めない行動ばかりをする大軌に扱い辛さを感じつつ、二人はとりあえずずんずん関から離れて行く大軌を追い、真意を聞き出すべく呼び止める。
 
大軌は立ち止まると、面倒くさそうに振り返り、追って来る二人の顔を見る。
二人が何となく苛立っているので眉をひそめる大軌だったが、それが自分のせいなどという考えは毛ほども持っていない。
大軌はまた一つ息をつき、再び歩き出しながら二人に答える。

「空から行く。そのまま城に降りて、俺と月杯が周りの相手をしてる間に町娘はケリをつけて来い……」

「はあ?」

空から行く。大軌の奇想天外な答えに、龍天鏡は完全に呆れ顔で言う。月杯は黙ったままだが、何かを考えている様子だった。

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