Step up! 20
「それは危険じゃないか?」
セージは杖を構えた。
「風よ、刃となれ!」
風の刃で枝を切る。その枝は風がセージの手元へ運ばれた。
「セージ…。」
懐から別の瓶を取り出し、中に入れた。
「普通の木なのに。」
木に背を向けた瞬間。「…うわっ!」
セージの足首に枝が巻き付いた。
「ファイヤー!」
マイケルの苦手な炎魔法。火の粉は飛ばない。
「マイケル!」
セージは2つの瓶を落とした。
「その瓶の中身と妹をよろしく…。」
木の口に吸い込まれたセージ。
放置された瓶2つとマイケル。
「どうやって帰ろう?」
歩くしかない。
飛べば3分の道は、歩けば15分。その上方向がよく分からない。
「迷子になっちまった。」
結局40分。歩いてなんとか民宿に戻ったマイケルは、食堂に行った。カレンがお茶を飲んでいた。
「戻ったか…。」
ルシャトリエはマイケルが戻るのを予想していたのだ。カレンは泣き過ぎて赤くなった目でマイケルを見つめる。
「マイケル…。」
「ルシャトリエさん、俺にも頂けますか。…メアリーに引き続き…セージも飲み込まれたよ。」
「…知ってるよ。…兄のことだもの。」
「…妹をよろしく、ってセージが言ってたよ。」
『その瓶の中身と』は伏せておいた。
「…どうしようか、マイケル。作戦実行不可能だね…」
「どうすればいいんだ、…俺たち。」
ルシャトリエがカップとポットを持って来た。お茶を注ぐ。
「マイケル、どうぞ。…この土地について、下調べはしたかい?」
「…入念にしたつもりでした。」
「…我が家で代々受け継がれている記録があるが…、読んでみるかい?1500年前のものも…あるぞ。」
「…はい。」
地下の書斎。薄暗く広い部屋に、古い本の匂いが充満している。
「このあたりの棚が参考になるだろう。わしは夕飯の仕込みをするから…」
ルシャトリエは書斎を後にした。
約1600〜1400年前の記録だ。ちなみに現在は魔界暦2645年だ。
3時間かけて解読した。
「魔界暦1062年春。不思議な現象の始まり。季節外れの花が咲くようになった。この年は、天気の変化が激しく、世の中は不作に悩む。」
「魔界暦1138年春。花摘みに出かけた少女が行方不明。その後10年、化け桜が頻繁に目撃され、行方不明者は増えた。」
「魔界暦1148年春。化け桜を退治しようとした青年が食べられる。怒り狂ったその恋人が、花園を焼き、猛火に飛び込んだ。焼け跡に残ったのは恋人の骨。木の下には行方不明者達が埋まっていた。行方不明者達の半分は生きていた。」
「夕飯の準備が出来ましたよ。」
書斎に現れたのはルシャトリエの妻・カトリーヌ。
「はい、今行きます!」
二人は食堂で、さびしい夕ご飯の時を過ごした。メニューは“桜のスープ”“魔獣のステーキ薔薇ソース”。
「まだ生きてるよな?」
「二人とも生きてるよ!ブレスが反応してる。」