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クエストフォースエピソード3約束の地に
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クエストフォースエピソード3約束の地に 18

「調子にのるなー!!」
イージーは、ヴィンの攻撃を負う覚悟で槍を突き出した。
「そんな、付け焼き刃の突きでオレは、倒れないぞ!」
ヴィンは、イージーの突きを軽く避けた。
だが、イージーはヴィンに取り付いてきた。
まず、ヴィンの剣と短剣を足元に落とした。
『今』のヴィンに体術の経験はない。
「お前、ホントにアイツのコピーか?アイツはある程度、体術の鍛練はしていたぞ。
お前はからっきし出来ないじゃないか」
「だから、さっきから言ってるだろう。
オレはコピーじゃない…ただ『この』世界のオレじゃない」

「何、『この』世界だと?」
ヴィンは、急に殺意が周りを覆っているのに気付いた。
この場合は、大体敵が周りにいるのだ。
これは、『この』世界に来てから身に付いた能力の一つだ。
イージーも、それに気付いたようだ。
「お前の仲間か?」
イージーがヴィンに真顔で聞く。
「だったら、嬉しいんだけど…明らかに違うな」
「どうやら、本当にそのようだな」
イージーは、ヴィンを離した。

イージーの拘束が苦しかったらしく、ヴィンは咳き込んだ。
「おっと、悪かったな。つい本気で力を入れてしまってな」
ヴィンはその言葉を嘘だと感じた。
イージーなら、あのまま簡単に自分を殺せたはずだ。
でも、殺さなかった…それは、イージーに何か考えがあって手を抜いたのだろう。
「今日は、何かのパーティーなのか。
えらく敵さんが多いじゃないか”ヴィン”」
「えっ?」
嬉しかった。
ただ、自分の名前が呼ばれただけなのに嬉しかった。
あまりにも、当たり前の事なのに、不意にヴィンは瞳から涙が溢れ出した。

「あぁ、今日はパーティーがあるのさ」
足元にある剣と短剣を拾いヴィンは、涙を拭いもせず殺意のある方へ走り出した。


それから、約30分程、ヴィンとイージーは殺意と闘った。
殺意の正体はやはり、モンスターだった。
しかも、『この』世界では上位に即する『シシン』と呼ばれるモンスターで見た目は土の色の肌をした人間の姿で、知能と体力があり、それぞれが棒を持ち、集団で闘うのを得意とするモンスターだ。
その戦いの最中、ヴィンの剣が折れてしまい、途中から短剣で戦うハメになってしまった。

最後に残ったシシンが倒れた時、イージーが槍の柄を地面に叩きつけた。
「異世界のヴィンも腕はまあまあだな…」
「そんな事より剣が折れちまった」
「俺についてこい、それぐらいなら直せるはずだ」
「何だ、もう信用してくれたのか?」
イージーはヴィンの肩を叩くと黙って歩き始めた。彼の大きな背中は、見知らぬ世界で唯一信用できるものだった。

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