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ディストーション 7

扱いとしては、雲と風から天気を予測するのと同じだ。雲の替わりに、ありとあらゆる『状況』を判断材料とし、同じように確率で表される。
そして同じように、結果が大きいほど確実性は増した。
観測された嵐は逸れず、星が滅びるというなら滅びる。

世界滅亡宣言をしやがった無責任占い師の言葉はこうだった。
『もう手遅れ』。

三年前の平和な世界は、占い師の予測する滅亡の流れに足を踏み入れたらしい。

だが世界は、あのときからガラリと変わった。
大きな変動だ。流れに歪みを生じてもおかしくないほどの。

繰り返すが、占いの材料は『状況』だ。
自然も社会も区別はされない。自然現象のウェイトが大きいのは事実だが、小さな歪みの干渉のために占いの結果が変わることは十分ありうるのだ。

本末転倒のようにも見えるが、この因果論、そうバカにしたものではない。
少なくともこの世界は、『流れ』と『歪み』の因果によって成り立っている。迷信でも精神論でもなく、はっきりと証明できる物理法則として、厳然と決まっている。

宇宙的な視点で見れば、どんな事象も歪みとは言えない。全ては理由があって起きる、大きな流れの中の一幕でしかないのだが、この際そんな大きな話はなしだ。
この『歪み』は、人間の視点で見た場合のものだ。

俺たちは、『人類が滅亡しない』流れを作り出さなくてはならない。


今のところ、確認されている大きな滅亡への要素は、地震津波の自然災害、UMAの出現、新種の病気の発生、隕石の接近etc…

そしてこれら流れの最終章が、三年後に起こる何かだ。
三年後、とはっきり言うからには、そのとき何かが起こるのだ。決定的に、人類を滅亡に導く何事かが。

滅亡のきっかけは、ささいなことだったはずだ。
大陸の南端で蝶が羽ばたいて、北の果てで嵐が巻き起こるように。

蝶が、すでに羽ばたいたというならば俺たちのすることは一つ、嵐に行き着くまでの流れ…連鎖し干渉し広がる無数の要素を、途中でねじ曲げてやるまでだ。

具体的に何ができるとは言えない。言えるわけがない。
だが三年前の宣告がなければ、世界は平和だった。
平和のまま滅び、その流れの中に、俺たちはいなかった。最後の日に無抵抗に滅びる、無数の人たちの一人としてしか、俺たちはいなかったのだ。

人もまた一人ひとりが、流れに干渉しうる歪みの極小単位だ。予測不能の要因の一つでもある。
たとえばこの、自然物理に拠らない個人の特殊能力もまた小さな歪み現象だ。人が一人そこに存在することで起こる歪みの延長線。

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