PiPi's World 投稿小説

ディストーション
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 4
 6
の最後へ

ディストーション 6

通りに立っていた女に顔を見られても、どこ吹く風という様子だったとか。
ターゲットはあくまで男なのだ。

「そんな猟奇殺人鬼が、若くて美人の女だっていうんで、一部のカルトに大人気でな。模倣犯も増えて困ってたんだ。やあ、君らにはなんとお礼を言っていいやら」

例の滅亡宣言からこっち、治安は悪化の一途をたどり、治安局の持つ抑止力ももはや無きに等しい。

熱心な治官も中にはいるようだが、悪徳治官は横行しているし、裁判もまともには行われない現状だ。

たぶんあの女が拘置所にいる期間も、そう長くはないだろう。


聞けば、感謝はされても金一封はつかないらしい。
ということで、俺たちは感謝状を固辞して町を去った。名もなき正義の味方二人組として。



さて、俺とヨハンは世界滅亡を防ぐためにこうして旅しているわけだが、実際やっていることといえば、ほとんどこんな感じだ。

まず、物見遊山がてら訪れた地で、何かしらトラブルに巻き込まれる。この、『巻き込まれる』のはどうも運命らしい。今のところ百発百中だ。
こうして行き会ったトラブルには、俺たちの介入で何かしら流れの変化が起こる。
俺もヨハンも、(おもに暴力方面で)けっこう優秀な能力持ちなので、関わるだけでも結果に影響が出るのだ。
もちろん、解決する方にとは限らない。むしろ騒ぎを大きくすることが多い。

ただ俺たちは、(基本的に)善良な市民なので、(基本的に)悪いことはしない。できるだけがんばって被害を抑えようとはするのだ。
今までの成績を見てみると、世直しに役立ったのが今回も含めて三件。事態を悪化させたっぽいのが、たぶんその倍くらい。…たぶんというのは、最後まで見届けずに逃げ出してきたケースを含めての話。

何やってんだというつっこみはなしに願いたい。
いいわけさせてもらえれば、俺たちは完全に巻き込まれ型であって、自分から事件を引き起こしたりは断じてしていない。

あと、もう一つありそうなつっこみ、つまり、お前らぜんぜん世界を救うようなことしてないじゃないか、という点に関してだが…

これが意外と、無意味でもないのだ。


占い師とは何をする職業か、というのが糸口だった。

占い師の仕事は『流れ』を読み、流れの帰結する先を予測することだ。
この世界において占いとは、個人の能力に結びつきながら確立された一つの技術であり、いかがわしいものではない。

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す