PiPi's World 投稿小説

ディストーション
その他リレー小説 - ファンタジー

の最初へ
 12
 14
の最後へ

ディストーション 14

そりゃ俺だって、少しくらいは正義漢ぶって、人助けしてやるなんて気がないわけではない。だが俺はこいつに、何一つ賛同してやりたくなかった。
「世界なんか知るか!俺は、俺が死にたくねえんだよ。俺が!滅亡に巻き込まれたくねえんだ。他のやつなんか知るか」
「な…んという…」
我ながら、自分勝手と開き直りの甚だしい言い分だった。案の定、アーノルドはあっけにとられている。
「では君は、もし君一人滅びから助かる手だてがあるなら、他の者全て犠牲にしていいというのか?君が言っているのはそういうことだ。君が、この町でしたのも、そういうことなんだぞ」
「悪いかよ、てめえだって同じことしてんだろうが。親が、自分の子を先に犠牲にしてんだぞ。親の他に誰も守ってくれない子供が、こんないい大人どもより先に犠牲にされるんだ」
俺は周囲の連中をぐるりと睨みつけた。
「旅人が来なくなったら、まず娘を食わせるのか?それから自分か?」
アーノルドの表情が、かすかにゆがんだ。握った巨大な拳が震える。
「たった三年長らえるために、人間捨ててけだもの同然になったこいつらが、感謝するとでも思ってんのか」
「感謝など!」
ブンッ、とアーノルドが拳を突き出す。
とっさに身を屈めて踏ん張った足元が、風圧にあおられて数メートル、地を滑った。
フライパンは放さない。こいつが命綱だ。
「私には、責任が…」
「世界が終わるまで言ってろよ」

あの占い師は、この男のように一つの役割に固定された者たちを、その流れから解放するために、滅亡を宣言したのだ。…そのはずだ。
だがこの町は、忌避すべき滅亡の予兆そのものだ。
きっと本当なら、みなこの町を出るなり理不尽な搾取に反抗するなりしていた。どんな形であれ、結末へと押し流す流れがあって、みなそれに乗っていたはずなのだ。
この男が作った忌まわしい秩序が流れを停滞させ、町を町の形にとどめている。

壊してしまえ。俺は強くそう思った。


にわかに左手が熱くなる。

と、背後から声が上がった。
「オイ、こいつ手から何か出してるぞ?」
!?
……しくった!火種が大きくなりすぎたか。アーノルドの反応は早かった。間髪入れず、フライパンによって死角となっている怪しげな左手めがけて拳を振った。軌道を読み、辛うじてかわす。南無三!
「喰らえよ!」
ポップコーンのように弾けた木屑だが、正体の割れている奇襲は失敗である。
「うぉっ!?」

SNSでこの小説を紹介

ファンタジーの他のリレー小説

こちらから小説を探す