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クロスロード
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クロスロード 9

そう言うとシムは笑って弓を構えた。弓はきしみ、束ねられた三本の矢がダットに放たれる。一本は斧で防ぎきれたが、残りの二本は鎧の関節部分に突き刺さる。
「さらばだ、シムとやら!!」
矢が刺さったままダットは馬から飛びおり、シムに斬りかかる、シムは笑って弓を構えて動かない。ダットはグサッと突き刺さる感覚を覚えた。
「お世話様」
シムは笑ったまま動いていない、動いていたのはマッシュだった。マッシュの剣がダットの鎧を貫通して串刺しにしていた。
「恐斧のダット、討ち取ったり…」マッシュは無表情でそう言った。
ドスッ、と音をたててダットの重い体が地面に転がる。自慢の巨大な斧は、虚しく地に突き刺さっていた。
「ダット!!」
ダリウスは堪えきれずに馬を走らせた。途中シムの放つ矢が肩に刺さったが、それに気付かずにダリウスは走り続けた。門前の二人の男の姿が段々と大きくなっていく。
「憎しみに染まった剣では勝てぬ、下がれダリウス」
興奮して馬を走らせるダリウスの隣りを、黒騎士が抜き去っていく。ダリウスは落ち着くと、その場に止まり黒騎士の背中を見送った。
シムの放つ矢が黒騎士を威嚇する。しかし黒騎士はそれを次々に切り払い、ついに当たる事なく接近戦に追い込んだ。
馬に乗ったまま黒騎士が無防備なシムに斬りかかる。当然のようにマッシュが横から出てきたが、黒騎士は逆手で斬り上げ、マッシュを軽く吹き飛ばしてしまった。
黒騎士は素早く折り返し再びシムに斬りかかる。今度はマッシュの姿はない、剣を抜いたシムの額には、汗がにじんでいた。
シムは姿勢を低くし黒騎士の剣を避けようとした。しかしシムの右足は異様に重い。ふと足下を見ると、ダットが足を掴んでいた。
「これが戦だ、若造が…」
焦るシム、ダットの腕を斬り落とそうともしたが、鋼鉄の装備がそれを許さなかった。身動きのとれないシムに黒騎士の剣が襲いかかる。
黒騎士の剣が振り下ろされた時、真っ赤な血が飛んだ。
しかしそれはシムの左目を奪うに終わった。シムはマッシュに押し倒され難を逃れていたのだ。
怪訝に思った黒騎士が振り返ると、シムとマッシュの姿はいつの間にか消えていた。
「逃げたか…フン」
ダリウスは戦慄を覚えた。 一瞬の出来事であったが黒騎士の剣筋の凄まじさには畏怖を覚える物であったからだ。
呼吸一つも乱さずに二人を退けてしまった。 何というお方だ。
「ダリウス、こいつを始末しておけ。功に焦る使えぬヤツなど死ねばいい」
黒騎士はさもつまらなさそうに言った。

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