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クロスロード
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クロスロード 13

しかしその勢いに反して、戦場は妙に静まり返っている。皆己の生唾を飲む音だけが聞こえていた。
「ダリウス隊の姿が見えないが何処に行った」
「それが…」
シュウが尋ねると兵士は語った。ダリウス隊が投石機を破壊した事、そしてその隊で仲間割れが起き、敵襲に紛れて彼等がどこかに行ってしまった事を。
「ダリウスがいないだけでこうも簡単に隊が乱れるとは……、まさか内通者が?」


「流石だなトロイ、屈強のダリウス隊がああも簡単に…、お前を敵にはしたくないものだな」
崩れかけている館の窓から、バルロは戦場を眺めていた。その目はまるで戦場を人事のように冷たく見つめている。
「そろそろ脱出を、黒騎士は危険です、今は伏兵部隊と偽の情報で撹乱出来ていますが、それも時間の問題です」
「分かっている、先に行ってろ」
バルロは壁に立て掛けていた剣を蹴り上げると、それを手に取り歩き始める。トロイが先に隠し通路に入るようにすすめると、バルロは断りトロイが入って行くのを見守った。
「バルロ殿、さぁ早く!!」
トロイが後ろを振り向くと、通路の扉は閉じられていた。外側から何重にもロックされ、開けようとしてもびくともしない。
「ナシアスを頼んだ、あいつはああ見えて寂しがり屋でな…、相手をしてやってくれ」
「しかし…」
「行け、早く!!」
バルロは扉に寄り掛かったまま俯き溜め息をついた、トロイの足音が聞えなくなるとバルロは剣を構えた。
「そこにいるのは分かっている、出て来い!!」
バルロは震えが止まらなかった、死ぬ覚悟はしていた。しかしその局面では肌を刺す緊張感がある。
―簡単には、死なない!!―
バルロの手の震えが止まった。そして彼の目が見開く。
「よお」
「ナ、ナシアス?こんな所でなにしてるんだ!!」
「一人じゃキツいだろうと思ってな、まぁ二人でもキツいだろうが」
先に館を脱出したはずのナシアスが目の前にいる。二度と会えないと思った人物が手をあげて笑っていたのだ。バルロは少しぼやけてしまった目を擦ると、笑顔で「君は脳天気な奴だ」と呟いた。
ナシアスは剣を抜くと扉を睨んだ。部屋に一つしかない扉、隠し通路から敵が来る可能性はない、それ故その扉が開くのが戦闘開始の合図になる。
「サルファたちがそろそろ来てくれるはずだ、バルロ、それまで死ぬなよ…」
「死ぬわけないだろ、君の部下のまま死ねない」

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