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クエストフォース〜竜キラーを目指す男〜
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クエストフォース〜竜キラーを目指す男〜 15

「知らない、って…あの『何か』に取り憑かれる前は、アンタの意思で動いてたんじゃないの?」
チェルミラは静かに目を伏せた。
「それが、先程目が覚めてからというもの、どうも記憶が朧気なのです。きっと、術が解けると同時に記憶も消去されるという暗示がかかっていたのでしょう」
「しっかし、そんなにしょっちゅう精神操作をやられて、よくアンタの頭は平気だったわね」
コハルミの言葉に、チェルミラは軽く首を振った。
「そんな事はないです」
チェルミラはそう言うと、ヴィンとコハルミに右手の甲を見せた…二人は声が出なかった、チェルミラの右手の甲には竜族の証の、竜の刻印があった。
「目が覚めたら、右手にこんな刻印が付いてました」チェルミラは、そう言った後まるで、洪水のように涙を流した
「この刻印があるから、何かが起こるかどうかはわかりません。ただ、恐いんです。もしかしたら、何かが起こるかもしれなくて…」「甘いことを、言ってんじゃないわよ」
コハルミの口調には怒りが混じっていた
「アンタは、そりゃあ、操られてた状態でどれだけの事をしてきたか知れたもんじゃない。アタシの部下だって何人かは死んだし、そうでなくてもかなりの傷を負ってる。
事情はどうあれ、アンタにはそれを償う責任があるんだ」
「ちょ、ちょっとコハルミ、それは言い過ぎじゃ…」
ヴィンが間に入って止めようとする。だが、全身に走った痛みで再びベッドへと倒れ伏す。肩を震わせるチェルミラをちらりと見やり、コハルミは続けた。
「でも、ね。少なくとも今、アンタは正気を取り戻してここにいるの。
同じ失態を二度と繰り返さないようにする事、そしてアンタのような犠牲者をこれ以上出させないようにする事――それが、アンタができる償いなんじゃないのかしらね」
それだけ言うと、コハルミはそっと部屋を出て行った。
「コハルミ…」
ヴィンはドアを見ながら、そっと呟いた
「そんなことを言われたって、どうしょうもないほど不安なのよ!」
チェルミラは部屋全体に響くほど叫んだ。それを隣で見たヴィンが
「だったら、戦うんだ…その刻印と不安に…それが、きっと、チェルミラにできる償いなんじゃないかな」 そして、笑った…誰もが見てるだけで安堵するかのような不思議な笑みだった「少し考えさせて下さい」そうチェルミラが言ったあと彼女も部屋を出ていった「オレも、そろそろ動かないとな」
ヴィンが一人寂しく、呟いた

それから3日後。ケルラの街の外れに、二つの人影があった。
「身体は、もう大丈夫なの?」
「完全な本調子とまではいかないけど、旅をするのに支障はないよ。随分とお世話になったね」
「いいのよ。後でたっぷり利子付けて返してもらうから」
そう言って、コハルミはくすりと笑った。
「これから、行く宛はあるの?」
「さあ、ね。なんとかなるさ。噂を辿って邪竜を探すよ。オレはドラゴンキラーになる男だから」
「あなたらしいわね」
今度は二人とも笑った。透き通るような、気持ちのいい笑い声が響いた。

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