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最果ての城
その他リレー小説 - ファンタジー

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最果ての城 5

「で?」
「……何だ?」
怪訝そうな顔になるマラナに、レオが苛立たしげに言う。
「何だ、じゃねえよ。あんたの目的は、って聞いてんの。『魔狼』に会ってどうするつもりだ?」
その口調には『妙な目的ならば容赦しない』という言外の意味が含まれている。
「私は――そうだな、まずは礼が言いたい。どんな気紛れで私を助けたのかは知らないが、恩人には変わりない。それから……」
「それから?」
「この戦争を終わらせたい。これ以上戦を続けても、泥沼に嵌るだけで益はないはずだ。そのためにも『魔狼』の力を借りたい」
それはマラナの偽らざる本心だった。何故躊躇なくこんな事が言えたのか、その時の彼女には分からなかった。
レオはじっとマラナの目を見ていたが、不意に立ち上がって言った。
「やつらが来る。あんたと良く似た匂いのする2人組みだ」
「奴等の狙いはお前だ、さっさと隠れろ!!」
「は?その格好で戦う気か?お嬢さん」
「減らず口を叩くな!!」
マラナがそう叫ぶと彼女の横を白い光が横切った。
ドサッ、マラナの目の前でレオは鈍い音をたてて倒れる。レオの胸には、銀でできた極太の針が刺さっていた。
「そこのお嬢さん、そいつは“人狼”、人を食って生きる化け物だ」
「そうそう、危ないから離れて」
二人の男がマラナに近付く。二人は一般人の服装をしていたが、捲りあげた腕に握られていたものは一般人が持っているものじゃなかった。
一人は狙撃銃、もう一人はアサルトライフルと呼ばれる、連射型の銃だった。
マラナは右腿に隠した銃と、左腿に隠したナイフ、どちらを使うか迷っていたが、二人の武器を見ると舌打ちした。
「大丈夫だったか?嬢ちゃん」
「危ない所を助けていただき、ありがとうございます」
そういうとマラナは走り出す、片方の男がそれを追おうとしたが、もう一人がそれを諫めた。
二人はマラナについて感情的に口論したが、それはすぐに笑い声に変わる、人狼に銃を突き付けて二人はおどけていた。
マラナは一度その場を離れると、直ぐさま二人の姿を確認できる所まで戻り、隠れた。
「レオは私に関係ない──」
そう呟きながらマラナは右腿の銃に手を掛ける。そしてそれを抜こうとした時、レオは立ち上がり、アサルトライフルを持っていた男の頭を叩き潰した。
もう一人の男は“まず”目を瞠った。普通ならそこで状況の理解に時間がかかり、身動きがとれなくなるところだが、そいつは違った。
マラナが一旦銃から手を離し、再び手をかける間にそれは起こった。

「……お嬢さん、出て来な」
(バレていたか!)
「今そんな所に居るってことは、きっと何処かの軍人なんだろう……所属する国は何処だ?」

マラナは隠れるのをやめ、男の死体とレオの体――少なくともマラナには死んでいる様に見えた――が転がる木の下へと歩み出た。必死で争い事を避けていたのに、その努力も水の泡か。

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