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最果ての城
その他リレー小説 - ファンタジー

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最果ての城 1

今の人間が生まれ、進化する前。地球では今と同じように人間達が暮らし、そして争っていた。今は「無」き人間達の物語を、始めよう―


マラナは目を覚ますと、砲弾の音と人間の怒号が随分と遠くに聞こえる事に驚いた。いつのまにか戦地を逃れ、この場で力尽きて眠ってしまったらしい。相変わらずどこを見渡しても青く繁った木々と、死体しかない森。マラナは戦いから逃れほっとする一方、遠雷のように響く戦の音に不可解な疎外感も感じていた。(やはり女の私に戦争など無理だったのだ。)草の上で仰向けになったまま、マラナは悔しさに唇を噛んだ。
戦うたびに傷つき生身の身体も失った
もうすでに身体の大半は『ギミックボディ』と呼ばれる『暗器つきの義体』になっている
オリジナルと呼べる部分は目と脳みそくらいなものだ
「(ここで死ぬのも悪くない…)」
失うものは何もない
そう諦めかけ目を閉じようとした時だった
「生きるって事と死ぬって事は旅に似てるよね」
腹部に何かが座った感覚に起こされた
「…」
見るとリュックを背負いタオルを頭に巻いたクマのようなハムスターのような不思議な生き物がちょこんと座っていた
「どっちも進む道は闇の中、『人』は可能性に対して後ろ向きに生きているからあきらめることができる」
リュックから水筒を取り出し中のコーヒーを一口飲んだ
「『もしかしたら』に賭けることも時には大事だよね」
そう言うとコーヒーを差し出した
「これを飲むといい、落ち着くよ」
上半身を起こしコーヒーを受け取り一口飲んだ
不思議と心が落ち着き死のうとしていた自分がどこかへいってしまった
「ボクの名前は『ツヴァイ・ナル・マキシマム』みんなには『ツナ』って呼ばれてる」
ピョンっとマラナから飛び降りた
「まぁもう『みんな』はいないんだけどね」
そう言うとカリッと指らしきものを噛んだ
「生きたいならボクの血を舐めるといい、『魔狼』(ライカンスロープ)の血は傷を癒やすよ」

それが私と最後の魔狼ツナとの出会いだった
そして数年後…

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