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最果ての城
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最果ての城 17




第1隊と分かれた二人が、遺跡の最寄りの街に到着したのは、主都から二日目の午後のことだった。

街のすぐそばには、シェザール軍の小規模な駐留基地があった。
主都では当たり前のように町中を闊歩していたシェザール人植民者の姿はここでは全く見られず、いるのは軍人のみだ。
だが、人口も少なく資源があるわけでもない田舎町のことなので、マラナもとりたてておかしいとは思わなかった。
クレザムが植民地とされてからもう数年経っている。掠奪無法の段階はとうに過ぎ、軍人の姿も日常化していた。
街のクレザム人にも、彼らを恐れる様子はない。
実際、二人は街に入る際、シェザール兵による身元のチェックを受けたが、ごく形式的なものだった。
話が通っているとはいえ、トラックに積んだ資材に紛れている武器や、ギミックボディのマラナさえ、さして警戒もなく街を通過できたのだ。

偶然かどうかは知れないが、調査地域は遺跡を包括している。
マラナたちは予備調査と称して、堂々と遺跡に向かった。

遺跡は街から一時間ほど歩いた山中に、隠れ里のように存在している。
ハトは博識なところを見せて説明した。



たどりついた遺跡は、遺跡という言葉から想像するほど荘厳なものとはいえなかった。
そうと聞いていなければ、子供のいたずらや遊んだ痕跡と思ったかもしれない。

木々のまばらな斜面に、腰ほどの高さの白っぽい岩石が、いくつも立ち並んでいた。
秩序立った並びではないが、柱のように細く、不安定に地に突き立つ様子は、どうも自然にできた光景ではない。
柱状節理というのだろうか、石は全て断ち割られたようなまっすぐな断面を持っていた。珍しくはないが、周辺では見られない種類の岩石だ。
輸送手段の発達していなかった時代にこれらをどのように運んだのか。考古学者が論争を繰り広げるのもうなずける。
植民戦争が勃発したために発掘作業が中断し、立石の並べられた目的は不明のままだ。

興味はなくとも感心しながら眺めるマラナをよそに、ハトはどんどんと石柱の間を、朽ち葉を踏みしめながら進んだ。緩やかな稜線とはいえ、舗装もされていない腐葉土の坂を息も切らさず登っていく。
見かけによらぬ健脚に、マラナは舌を巻いた。

「ここが遺跡の中心」

林の奥で、ようやくハトは立ち止まった。
マラナは目を瞠った。一瞬、少年の前に壁が築かれているように見えたのだ。

彼が、怖々と手で触れているのは、一軒家ほどの巨大な岩だった。
表面のなめらかな一枚岩で、底は斜面のために端がわずかに浮いており、地に埋まっていないのがわかる。
これも自然のものではないのだ。

ハトは、マラナが運んだ雑嚢を降ろさせると、対衝撃ケースの中からいくつかのアンプルを取り出した。
なれた手つきでアンプルの頸を折り、封入されていた薄青い薬液を滴瓶に吸入していく。

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