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最果ての城
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最果ての城 15

ハトが描き込んだ印は、チップに示されたクレザムの遺跡郡の場所だった。
そのうち三つが地衣類調査地域と重なっているのだ。

「偶然か?」
「どうかな」

少年は腕組みしながら首をひねった。

「魔法動物の生息域で植物相が変わるってのは、よくあることなんだ」
「そうなのか?」
「うん。だから、調査対象が重なっても変じゃない。ただ、」
「ただ…このタイミングとなると、偶然とも思えない、か」
「そゆこと」

ハトはカシュケ=ナダでの顛末を知っている。
ミヘザエルと、人狼。
マラナは眉を寄せた。

「この調査団に、他の目的があると思うのか?」
「かもしれないってだけ。博士たちはコケの調査する気満々だしね。ただ、調査地の選定には出資者の意向もあるみたいだ。頭に入れておくだけでもいいんじゃない」

あくまでハトの立場は研究者なのだ。
少年はマラナの肩を、彼の師そっくりのしぐさでぽんぽんと叩いた。

「報告するかどうかはあなたに任せるよ」


ミヘザエル入国後、首都の目立たないアパルトマンで会った、情報部仕官の顔をマラナは思い出した。
仮の身分証を受け取るだけの短い接触だったが、彼らにも知らされていない『極秘任務』に、不審を抱いている様子だった。

マラナは報告をためらった。

彼女には負い目があった。
レオのことを、彼女は軍に報告していないのだ。カノープスにも口止めしてある。
でなければ、貴重な人狼を敵国に連れて行くようなことに、許可がおりるはずもない。
軍にとっては、レオはカノープスの助手の一人だ。

どのみち、調査団の訪問先については一般にも公開される。本国にも伝わるだろう。
知っているものが見れば、この符合に気づくはずだ。あえて言うまでもなく。

言い訳じみている。
自覚がないわけではなかったが、マラナは自分を納得させることに成功した。



出発の日。
早朝から宿の外が騒がしく、マラナたちは窓際に集まっていた。
大通りを、ミヘザエル軍の一個中隊が行軍している。

「この田舎町に、大規模な行軍だな」
「人道支援部隊だよ。シェザールの植民から、国境にはクレザム人難民が増えていてな。国政議会は難民の受け入れと支援を決めたらしい。アザニニア郊外に施設を設置してるんだ」

近辺の出だという傭兵仲間が、親切に解説した。
軍用車に積まれたミヘザエル軍の装備に、マラナは鋭く目を細めた。

「あれは……」

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