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最果ての城
その他リレー小説 - ファンタジー

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最果ての城 14

表向きだけでも傭兵らしくさせたかったのが一つの理由。
もう一つは、敵であれ味方であれ、事情を知らぬ者を交えて交戦状態に陥った場合を考えてのことだ。
撃たれても死ななかったり、素手で敵を潰し殺すところを、目撃されては困る。

調査団のメンバーともあまり接触させないように、マラナとハトは気を配っていた。
あの目立つ髪が無くとも、レオは人間とは違った。
爪の生え方、皮膚の質感。
ハトによれば、骨格と、臓器の数やその位置も、人間とはわずかに違うという。
間近に接していれば必ず気づく、ぞくりとくるような違和感だ。
他人に彼の正体を悟られるわけにはいかないのは事実だ。ハトはそのつもりで気遣っているだろう。
だがマラナの思惑は少し違った。
彼女はその違和感を、レオ自身に気づかせたくなかったのだ。
…多分に感傷的な理由のために。




午後、会議を終えたハトが、傭兵用の宿にやってきた。
他の傭兵たちが出発の準備に出払って、三人だけになると、ハトは口を開いた。

「やっぱりそう長くは滞在できないみたいだ。最長で七日だって」
「それは…短いな」

ハトの報告に、マラナは顎に手をやった。
クレザム国内での交戦はまだ起きていないが、戦時下にあることに違いはない。外国人の行動に制限があるのは仕方がないだろう。
しかし、七日は厳しい。
目的の遺跡への移動に、国境からトラックで二日はかかる。調査にも、人目を忍んでとなると数日は充てたいところだ。
人狼や魔狼がいたとしても、レオのようにのこのこ顔を出すとも思えない。

「国内十二ヶ所巡るはずが、二手に分かれて五ヶ所が限界だって、博士たちが嘆いてたよ」
「だろうな。学者というやつは」

学者たちの嘆く様が、容易に想像できる。マラナは肩をすくめた。
ハトは共感を示すように少し笑うと、続けた。

「それでちょーっとだけ、気になることがあったんだけど」
「気になること?」

ハトは頷くと、配布された広域地図を机に広げた。
クレザムの地形を細かく描き込んだ地図上に、五ヶ所、赤くポイントされた部分がある。

「この赤いのがハナツリゴケの分布調査地点。わかる?」
「……これは、」

マラナは息を呑んだ。
隣でレオが、怪訝そうに彼女を見る。

「何だよ、マラナ?」

答えないマラナに変わって、おもむろにハトがペンを取り出した。
地図上に丸印を描き込んでいく。
彼の描き込んだ四つの丸のうち、三つが赤い点と重複していた。

「ちなみにここが、今回の目的地。遺跡『クル=コバド』」

山岳地帯の一角の、重複した印をハトは指で示した。
レニチケの侵攻を受けたという遺跡のある街だ。

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