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最果ての城
その他リレー小説 - ファンタジー

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最果ての城 11


夜。マラナはカノープスに呼び出された。

「細かい話やら事情はレオ君から聞いた。言う事は三つ」

カノープスは指を三本立てて振った。

「一つ目。レオは混血だ」
「そうなのか?」
「これは説明すると長くなる。後で読んでくれ」

封筒が差し出される。
マラナは言われるがままに受け取り、丁寧にしまった。

「二つ目。まずはクレザムに行け」
「理由は?」

アヴィザイアはやたらと遠いが、自国の植民地である。比較的危険の少ない航路も開発されている。
リキル=カハリはヴァラキアから見て中立の国にある。
それに対しクレザムはヴァラキアの仇敵シェザールの植民地である。『シェザールより早く魔狼を見つける』事を考えると妥当と言えなくも無いのだが、何より危険だ。

「確かな情報ではないが、ここも数年前レニチケの襲撃を受けたらしい」
「それが本当なら……」

人狼がいる可能性もあるのか。

「三つ目。ハトを連れて行ってやってくれ。役に立つはずだ」

マラナはすぐさま抗議しようとした。あんなひ弱な少年、足手纏いになるとしか思えない。

「頼む」
「……分かった」

この人には逆らえない。これがカリスマという物なのか?少し違う気がする。
レオから踏み込んだ話を聞けたのも、この雰囲気のせいだろう。


その夜、マラナは床につきながら、レオの生い立ちについて思いを巡らせていた。
人間との混血児として生まれ、襲われ、拾われ、旅に出た。

「なかなか忙しい人生じゃないか……」

人狼、魔狼、人とは違うもの。
核を造り出した人間が、なぜ彼らを求めるのか。
知性ある、共感し得るものたちを、そうでないもののように扱ってまで?

マラナはその答えを知っていた。
そして否定できなかった。
(私もまた…)

彼女もまた、魔狼を欲している。
その目的が軍とは違っても。…否。

「何も違いはしない、か」

マラナは口元をゆがめ、つぶやくと、カノープスに渡された封筒を開いた。


翌朝。
マラナは身支度の前に、化粧ケースを開いた。
目的は化粧ではない。そこに隠したアンプルだ。
ギミックボディの延髄部と腰髄部に、ノズルを差し込み注入していく。

軍仕様のボディは、メンテナンスなしでも、通常の使用環境で数年間の活動が保証されている。
だが、クレザムは敵地だ。
『通常』環境が保証されるとは限らない。


…常に最悪を考えておくのは基本だと、マラナは思う。
だがこうして、二人のお荷物を目の当たりにすると、彼女の想定はそれでも足りない気がした。
二人とも、隠密行動には明らかに向いていない。

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