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もう一人のわたし
その他リレー小説 - 二次創作

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もう一人のわたし 5

まさ君の二度目の突っ込みには返す言葉もなかったらしく、そのままげんえい君はそっぽをむいてしまったが、
豪田さんはこのやり取りに虚を突かれたらしく一瞬きょとんとしたものの、品よく笑い始めた。
「ふふ、心配していただき、ありがとうございます。でも、兄には部活で遅くなるって言ってあるんです。だから、まだ大丈夫です」
「ま、まあ、それならいいんだけどね」
「まあ助かるのは確かだよ。俺たちよか年は近いし同じ女の子だし」
体勢を立て直したげんえい君とまさ君の言葉に、他人事のように納得してしまった。
そうかー、私も女子だった。男の人よりは女の人のがこの場合は近くにいてほしいもんだよねー。
ここまで他人ごとっぽく思えちゃう私ってなんだろうとは思うけど。
「でも私、子供を産んだことなんかないから……」
「いや、そういうことじゃなくてね」
豪田さんは何かずれている気がする。げんえい君も少しコケたような気がするけど、単純にうれしい。
「大丈夫ですよ。私には、こんな心配してくれる人がいるから、大丈夫です」
そう、だいじょうぶだ。……あれ? そういえばわたし、ここに来る前は産みたくないって言ってたような。どうしてだろう。
「私が励まさなきゃいけないのに、まりあちゃんに逆に励まされてるみたい。
 まりあちゃん、ここに来た時とは見違えるほど、いい顔になってます。今日はもう、大丈夫ですね!」
わたし、そんなにひどい顔してたのか。でも今は違う。豪田さんを笑顔で安心させられる程度には、いい顔になってるみたい。
「安心したかい。まりあもふっ切れたみたいだから、今日はもう帰ってあげな」
まさ君が豪田さんへ帰るよう促すと、今度は豪田さんもその通り従った。
つまり、今はともかく今までの私は、一人にしちゃおけないほどの顔をしてたということだろう。

「なあ、まりあ」
げんえい君がさっきと打って変わって神妙な面持ちで口を開く。
「さっき、無意識にいろいろつぶやいてたみたいだがな……」
なんと。わたし、そんなことしてたの?
「『自分がもう一人』とか、『どんな可能性もあるわたし』とか。まあ、よくわからないけどよ……
 言ってみりゃ、おなかの中にいる子供って、双子みたいなもんじゃないのか? 遺伝的には同じだけど違う個体なんだからさ」
「ふたご?」
「そもそも持ってる記憶が違う。まりあはもうこの基地の一員になって長い。つまり、みんなと過ごした時間も記憶も、長い。
 よく分からないけど、人ってのは同じ記憶や思いをどの程度、どれだけの人と共有できてるかでも違ってくるんじゃないかな。
 その子にはまだ俺たちと過ごした時間はない。だから、もしその子が産まれてきたとしても、まりあがいらないヤツになるなんてことは、絶対にないぜ」
「げんえいも、たまにはいいこというな」
「『たまには』は余計だろっ」
そうか。双子なんだ。後に続くまさ君の突っ込みは半分聞き流すように、げんえい君の言葉を頭の中で繰り返す。
「そう、だね。双子か。そうだよ。その通りだよ」
「双子としたら、卵を共有しない双子だから無卵生双生児とでもいうか、クローンというか」
こうじ君の言葉の中、気になる単語があった。前にエライ先生が言ってた単語。

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